○インド経済は、2000年代半ばに、1947年の独立以来初めての高成長局面を迎えた。また、リーマンショック直後には、多くの新興国で経済成長率がマイナス転落する中、インドは、中国とともに経済が堅調に推移し、世界から注目された。しかし、2011年以降、インド経済は急速に鈍化している。
○インド経済を足元で減速させている直接的な要因のひとつは、金利上昇である。金利上昇の背景となったのはインフレ率の上昇であった。金利上昇の影響を受けて、インド経済の最大の牽引役であった個人消費は、足元で急成長にブレーキがかかっている。乗用車、二輪車などの販売台数は伸び悩んでおり、携帯電話加入者数も頭打ちになっている。一方、中長期的な景気循環の指標となる投資率も、ピークアウトして低下しつつあり、インド経済が鈍化局面に入ったことが示唆されている。
○インドの経常収支は貿易収支悪化の影響で大幅赤字であるが、経常収支赤字が資本収支黒字でオフセットされているため、外貨準備が減少するような状況ではない。ただ、資本収支黒字が「足の速い」証券投資の流入超過に依存している点は、潜在的なリスク要因として注意が必要である。
○インド経済の大きなネックは財政赤字である。慢性化した大幅な財政赤字は、国内のインフレ圧力を高めるリスク要因になりかねず、また、財政の脆弱さはインフラ投資を進める上でのボトルネックにもなっている。
○日本企業の対インド投資への関心は高いが、実際の対インド投資額は、韓国やインドネシア向けよりも少ない。実際の投資が少ない主要な原因は、インフラ未整備がボトルネックになっているからである。他方、インド市場は、基本的に「低価格品市場」で、収益を上げることが難しく、日本企業には厳しい市場である。
○インドでの投資・ビジネスの拡大を妨げている要因は、過剰な規制である。これがコストを上昇させ、潜在成長率を低下させている。ただ、規制の背景には、貧困層・零細事業者保護という政治的配慮があることから、規制緩和をドラスティックに進めることは困難である。そうした点を考慮すると、今後のインド経済は、中国のような高成長率で拡大するのではなく、もっと緩やかな成長軌道を辿る公算が高いと考えられる。
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