シェール革命のマクロ経済的な考察~革命前であることがもたらすインパクト~

2013/11/14 芥田 知至
調査レポート

○シェール革命により米国では天然ガスや原油の生産量が増加している。米エネルギー省の推計によれば、天然ガスの技術的回収可能量は従来比で1.5倍、原油の埋蔵量は1.1倍になった。

○現状では、(1)消費地に近い、(2)水や電力のインフラが整っている、(3)パイプライン網など既存の流通設備が使える、(4)地質構造の詳細が判明している、(5)法制度とその運用が明らかである、といった点から、シェールガスの開発は北米に集中しており、当面、この状況は変わりそうにない。

○北米の天然ガスや副産するエタンなどが欧州やアジアに比べて安いことは、シェール革命が世界的なものになる前の過渡的な現象といえるものの、現時点では重要である。北米では天然ガスやその副産物を燃料や原材料とする産業は競争上で優位な立場になっている。ただし、シェールガスによって恩恵を受ける企業があれば、それと競合する企業は窮地に陥ることもある。

○シェール革命によって、米国経済はマクロ的な恩恵を受ける。海外から輸入していたであろうエネルギー源を、米国産のシェールガスやシェールオイルに置き換えることができ、これは輸入代金の支払いのための海外への所得流出に歯止めがかかることを意味する。シェール革命によるプラスの所得効果を背景に、米国では、日欧など他の先進国よりも、消費など国内需要を中心に高めの経済成長を遂げる可能性がある。

○所得効果によって米国内の需要が押し上げられると、海外から米国への輸入を増加させる効果もある。米国向け輸出が押し上げられることにより、間接的に各国で投資や雇用が促進される効果やシェール革命に伴う国際的な産業立地の見直しに関わる投資も見込めるだろう。

○北米以外のシェールガス開発は、石炭や石油などからの代替や新規の発電向け需要などに対応して開発されていくとみられ、既存の天然ガスに対する需要を押し下げて価格下落圧力になるといったことは起こりにくいと考えられる。シェール革命が世界に浸透する段階では、天然ガス利用の高度化も進んで、シェールガスを含めて天然ガスに対する需要、さらには実体経済にも革命的なインパクトが出てくるだろう。

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