○チェコは、EU加盟によって経済的には「ドイツの一州」のような性格が強まり、生産・輸出を通じて、ドイツ経済の影響を強く受けるようになっている。チェコの足元の景気後退は、ドイツ経済の不調とチェコ政府の緊縮財政という2つの要因による影響が大きいと言える。
○チェコのマクロ経済の特徴は、財政金融部門が比較的健全で安定していることである。チェコの財政赤字や政府債務残高の対GDP比率等の指標を見ても、近隣諸国よりも健全である。また、インフレ率も、近隣諸国に比べて低く安定している。チェコの財政・物価等のファンダメンタルズの健全さを反映し、チェコの国債の利回りは低く、また、通貨コルナの為替相場もユーロに対して増価している。
○チェコの経常収支は赤字であるが、これは、必ずしもチェコの国際競争力の弱さを示すものではない。経常赤字の原因は、外資企業の利益送金による所得収支赤字であり、貿易・サービス収支は黒字である。また、経常赤字の対GDP比率も近隣諸国に比べれば低い。さらに、直接投資や証券投資などの資本流入が多いため、資本収支は黒字であり、これが経常赤字をオフセットして、外貨準備は増加している。
○チェコは、通貨が強く安定しているため、安定通貨を求めてユーロを急いで導入する必要性は低い。また、安定した通貨を持っているわけであるから、独自の金融政策放棄を意味するユーロ導入を、チェコ政府があえて急ぐ必要性も低い。さらに、昨今のギリシャ危機は、チェコ国民の中に、安易なユーロ導入はメリットよりもリスクが大きく、経済構造改革を実行した後でユーロを導入すればよいとの認識を高めた。こうしたことから、チェコのユーロ導入時期は早くても2020年頃との見方が多い。
○チェコの輸出の主力品目は、自動車関連と電気電子関連の2大分野であり、日系メーカー進出数はチェコが東欧随一である。ただ、チェコは小国のため、投資受け入れキャパシティーに限界があり、用地や労働力の不足も顕在化している。今後、大規模な生産拠点は、より人件費の安いルーマニア等へシフトすると見られる。こうした中で、チェコは、単なる組立拠点から脱皮し、研究開発やサービスなどの高付加価値業務の拠点になれるかどうかが中長期的な課題となろう。
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