南アフリカ経済の現状と今後の展望~ サブサハラ・アフリカ市場攻略拠点として注目される南アフリカ ~

2014/05/30 堀江 正人
調査レポート

○南アフリカが1994年にアパルトヘイト政策を完全撤廃してから今年で20年が経つが、その間、同国の経済は概ね順調に推移してきた。しかし、最近、多くの新興国で経済ファンダメンタルズが悪化する中、南アフリカも例外ではなく、景気は、2012年以降、鈍化を続けている。景気鈍化の主因は、個人消費の減速と鉱山ストライキ激化による生産・輸出の低迷である。

○南アフリカの個人消費は、雇用情勢の停滞や家計負債残高の拡大などの影響もあって、弱含んでいる。また、主要輸出先である欧州の景気低迷や南アフリカ国内のストライキ激化などにより、企業マインドは低調で、投資も盛り上がっていない。

○米国の金融量的緩和縮小や南アフリカ経済の鈍化などを背景に、通貨ランドの対米ドル為替相場は下落を続けている。ランド安によって物価上昇圧力が高まることを警戒し、南アフリカ中央銀行は、2014年1月に1年半ぶりの利上げを実施した。

○他方、南アフリカの財政・金融部門は、他の新興国に比べて健全であり、また、国際収支も、大幅な経常赤字が金融収支黒字でオフセットされているため、外貨準備は減少していない。したがって、南アフリカが、他の新興国で発生したような金融危機に陥る可能性は低いと言える。

○南アフリカの人口の8割を占める黒人の失業率は27%と著しく高い。しかし、これは、逆に言えば、未稼働の労働力が多く、それをもっと利用することができれば、成長する可能性が非常に高いことを意味する。つまり、黒人の就労促進が今後の南アフリカ経済の成長戦略の中核である。

○南アフリカは、今後本格的な経済発展が期待される広大なサブサハラ・アフリカへのゲートウェイとしての魅力が高まっている。サブサハラ・アフリカへのアクセスが良く、インフラが欧米並みに整った南アフリカは、サブサハラ・アフリカ市場進出のビジネス拠点として注目されている。近年の南アフリカの株価が好調なのも、南アフリカ企業のサブサハラ・アフリカ市場への進出ぶりが評価された側面があると見られている。

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