○2013年度の経常利益はリーマン・ショック前を上回り過去最高益を更新した。売上高は、円安に伴う円建て輸出価格の上昇や消費税率引き上げ前の駆け込み需要といった押し上げ要因があっても、リーマン・ショック前の力強さを取り戻せていないが、その分を固定費の削減といったリストラ効果が補い、経常利益は水準を高めている。
○規模別に見ると、大企業、中小企業ともに業績は改善しているが、両者の差は拡大傾向にある。中小企業は売上高や営業外利益などの収益を上げる力が弱く、固定費や変動費といったコストの削減が進んではいるものの、大企業との収益力の差は縮まるどころか逆に過去最大にまで拡大してしまっている。
○現在、我が国はデフレから脱しつつあり、企業を取り巻く環境にも変化の兆しが見られはじめている。デフレ脱却は日本経済にとって明るい材料になると言われている。しかし、これまで企業の収益力改善を支えてきたコスト削減の効果は、かなり薄らぐことになる。加えて、デフレ脱却後も需要が伸び悩む状況はあまり変わらないとみられ、売上高はこれまで通り増えにくい環境が続くと見込まれる。
○日本経済がデフレ状態から脱しても、先行きの企業業績にプラスとなるような材料は乏しい。今後、企業は、これまで以上に、製品やサービスの高付加価値化戦略を強化したり、事業の効率化や人件費の抑制に取り組むことでコスト削減戦略を強化したりと、業績拡大を続けるための工夫を求められることになるだろう。
○企業業績の先行きは、設備投資の動向がカギを握っているとみられる。リーマン・ショック以降、設備投資は、GDPギャップが縮小する局面でも、ほとんど増えてこなかった。しかし、今後は、製品やサービスの高付加価値化と省力化を進める上で、研究開発投資や事業効率化投資などの重要性がより高まってくると考えられる。もちろん、新たな設備投資はコストの増加につながるため、需要があまり増えない中ではリスクをともなう。しかし、もはやデフレではない中で、企業にはコストの増加を恐れず攻める姿勢がこれまで以上に求められているのではないだろうか。今後は、大企業、中小企業関係なく、環境の変化に素早く対応できる企業とそうでない企業との間で収益力の差が拡大し、企業間の業績の違いがより鮮明になる展開が予想される。
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