インドネシア経済の現状と今後の展望~ ジョコ・ウィドド新大統領のもとで、どう変わるのか? ~

2014/10/16 堀江 正人
調査レポート

○インドネシア経済は、最近10年間、概ね5~6%の成長率を維持しており、他の主要な新興国に比べると際立って安定感がある。

○近年の景気堅調の原動力は、個人消費の底堅さである。個人消費拡大の主な牽引役は、オートバイの販売増加であったが、最近はやや足踏み状態となり、代わって、自動車の販売が急激に伸びている。

○2000年代以降のインドネシアの投資を盛り上げてきた大きな要因は、コモディティーブームを背景とする外資企業による鉱山開発投資と、国内消費拡大に対応した内需向け生産設備投資の増加である。

○2004年以降のインドネシア経済の堅調さを支えた要因として、為替相場の大きな変動がなく物価と金利が低位安定していたことも見逃せない。しかし、2013年に入ると、インフレ圧力増大・経常赤字拡大が顕著になったため、政策金利は引上げられた。これを受けて、足元の景気は鈍化傾向にある。

○インドネシアの財政は、赤字幅や債務残高はそれほど大きくないが、支出構造に問題がある。特に問題視されているのは、燃料補助金である。補助金によってガソリン価格が引き下げられ、それが、過剰な消費・輸入を誘発し経常赤字拡大の主因になっていると批判されている。

○インドネシアの政情安定と経済の堅調さから、一時下火になったインドネシアへの日本企業の関心は再び急速に高まってきた。対インドネシア投資の最大の魅力は、世界第四位の人口を背景とする消費市場の潜在力である。一方、生産拠点としてのインドネシアは、インフラのキャパシティー不足や労働者の教育訓練不足といったボトルネックを抱えている。これを解消することが、インドネシア経済の今後の発展のカギを握る。

○2014年10月に新大統領に就任するジョコ・ウィドド氏は、過去の大統領とは違う庶民派であるが、安易なポピュリズム的バラマキは避け、むしろ、財政規律を維持しつつインフラ整備資金を捻出するため、燃料補助金削減を実施しようとしている。しかし、新大統領の出身母体の闘争民主党は国会議席の2割弱を占めるにとどまっており、国会運営に苦戦するとの見方も強く、財政改革の先行きは予断を許さない情勢である。

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