○本レポートの目的は、欧州債務問題が発生して以降のギリシャ経済の構造調整の進捗度合いを評価するとともに、成長の持続可能性の向上という観点から、ギリシャと欧州連合(EU)に求められる経済戦略の在り方を整理することにある。
○総需要の抑制に努めた結果、ギリシャ経済はユーロ導入以降の成長の果実を失った。その対価として対外バランスの調整は進んだが、対内バランスの調整はまだ道半ばである。金融市場が落ち着きを取り戻しているなかで、対内バランスの調整を促すためにも、財政緊縮を継続する必要性は薄らいでいる。
○他方で、中長期的な観点からいえば、ギリシャ経済の持続可能性を改善する上で、供給力を高めるため構造改革(特に政府部門のスリム化)は必要不可欠である。またそれをユーロ圏の枠組みの下で行った方が、そのコストが低いことも明らかである。
○EUとギリシャの双方にとって最も望ましいシナリオは、ギリシャがユーロ圏に留まることに他ならない。そのためにも、EUサイドにはギリシャに財政緊縮の緩和を容認することが、ギリシャサイドには供給力を高めるための構造改革を遂行することが、それぞれ求められる。
○両者が妥協点を見出せない場合、ギリシャのユーロ圏離脱(グリジット)が現実的な選択肢となる。もっともそうなれば、ギリシャ経済は今まで以上の困難に晒されると同時に、EUの経済通貨統合(EMU)の在り方そのものに対する欧州内外の信認が低下する事態も避けがたいだろう。対立と妥協を繰り返してきたEUとギリシャであるが、双方に残された時間は最早そう長くはないと考えられる。
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