ミャンマー経済の現状と今後の展望~ 動き出したアジアのラスト・フロンティア ~

2015/06/01 堀江 正人
調査レポート

○ミャンマーは、かつてのビルマ式社会主義による事実上の鎖国状態と、その後の軍事政権の民主化抑圧に対する国際社会からの制裁のため、約50年にもわたって世界経済からほとんど隔絶されたような状態にあった。しかし、文民政権成立(2011年)後に、欧米諸国の対ミャンマー制裁が緩和されたことを契機に、ミャンマーは、一躍、アジアのラスト・フロンティアとして脚光を浴びるようになった。

○文民政権のもとでの経済開放・自由化や外国企業の対ミャンマー投資拡大などを追い風に、ミャンマー経済は高成長を続けており、足元の成長率は中国を上回りアジアでもトップクラスの高さである。

○対外関係正常化と経済自由化を受けて、ミャンマーの消費者心理が高揚しており、日本製中古車の販売が急増し、スマートフォンの普及も急速に進むなど、個人消費が急拡大している。また、外資系企業のミャンマー進出増加を受けて、ヤンゴン市内では新たなオフィスビルやホテルの建設投資も盛んである。

○ミャンマーは、50年間も国際社会から隔絶していたため、経済は疲弊・窮乏化し、国民の生活水準はアジアでも最低レベルまで落ち込んだ。ただ、その裏返しとして、ミャンマーの人件費は東アジア地域では最も低い。これは、労働集約型産業にとって、ミャンマー進出の大きなインセンティブとなっている。

○ミャンマーは、長期間におよぶ国際社会からの経済制裁によってODA支援を受けられなかったため、タイなど近隣国に比べて道路・電力といったインフラの整備が著しく遅れている。老朽化しキャパシティーの低いインフラが、外国企業の対ミャンマー投資を拡大する上での大きなボトルネックとなっている。

○劣悪なインフラを改善することは、ミャンマーにとって喫緊の課題であるが、円借款による道路、電力、鉄道などの基幹インフラ整備事業が既に始動しており、また、円借款による周辺インフラ整備支援を受けた日系工業団地も本格稼働する。こうしたインフラ整備プロジェクトが、今後もさらに増加するかどうか、また、実際の工事が順調に進展するかどうかが、今後のミャンマーの経済発展のスピードに大きく影響する。

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