中部地域におけるインバウンド消費の現状と今後の見通し~昇龍道を核に中部の魅力を世界へ発信~

2015/08/25 藤田 隼平、塚田 裕昭
調査レポート

○2014年に日本を訪れた訪日外国人は1341万人と過去最高を更新し、うち197万人が中部地域を訪れた。これは関東、近畿に次ぐ3番目の多さであった。中部地域のなかでは愛知県の訪問率が最も高く、123万人が訪れた。国籍別では、中国人の訪問が多かった。また、中部地域は、観光目的よりもビジネス目的での訪日者が多く訪れる傾向が見られた。

○訪日外国人の増加にともなって、インバウンド消費も大きく増加している。2014年のインバウンド消費は日本全体で2兆278億円となったが、地域別に見ると、中部地域では1327億円となった。インバウンド消費は2015年に入って増加テンポが速まっており、2015年上期における中部地域のインバウンド消費は前年比38%増の830億円と大きく増加している。背景にあるのが訪日外国人の増加ペースの高まりであり、2015年上期時点で132万人が中部地域を訪れている。

○足元の動向を踏まえると、2015年に中部地域を訪れる訪日外国人は285万人となり、インバウンド消費は1829億円となる見通しである。2016年については、円安による割安感の高まりが徐々にピークアウトすることに加え、中国経済の減速感が強まってくることから、訪日外国人の増加テンポは緩やかになるとみられるが、それでも中部地域には335万人が訪れ、インバウンド消費は2386億円に増加すると予測する。

○中部地域のインバウンド消費は増加しているものの、全国的なインバウンド消費拡大の大きな波に乗り切れているわけではない。今後、中部地域がインバウンド消費を持続的に取り込んでいくためには、(1)ビジネス目的だけでなく観光目的の来訪者を増やすこと、(2)宿泊客を増やし、長期滞在型の観光客を増やすこと、(3)中国だけでなく様々な国から観光客が訪れるようにすること、などが必要である。広域観光ルートである昇龍道にはこうした目標を達成することが期待される。

○中部地域には魅力ある観光資源が豊富にあるが、海外ではあまり知られていないようだ。これからは世界に向けて中部の魅力を積極的にアピールしていくことが重要となってくる。その意味で、2016年に開催が決定している伊勢志摩サミットへの期待は大きい。

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