近畿地域におけるインバウンド消費の現状と今後の見通し

2015/08/26 藤田 隼平、塚田 裕昭
調査レポート

○2014年に日本を訪れた訪日外国人は1341万人と過去最高を更新し、うち497万人が近畿地域を訪れた。これは関東に次ぐ2番目の多さであった。近畿地域のなかでは大阪府と京都府の訪問率が高く、大阪は374万人、京都は294万人が訪れた。国籍別では、中国人の訪問が多かった。また、近畿地域は、世界的にも有名な観光地を多数有していることもあって、観光目的での訪日者が多く訪れる傾向が見られた。

○訪日外国人の増加にともなって、インバウンド消費(訪日外国人消費)も大きく増加している。2014年のインバウンド消費は日本全体で2兆278億円となったが、地域別に見ると、近畿地域では4138億円となった。インバウンド消費は2015年に入って増加テンポが速まっており、2015年上期における近畿地域のインバウンド消費は前年比82.1%増の3261億円と大きく増加している。訪日外国人の急増が主な要因であり、2015年上期時点で350万人が近畿地域を訪れている。

○足元の動向を踏まえると、2015年に近畿地域を訪れる訪日外国人は730万人となり、インバウンド消費は6948億円となる見通しである。2016年については、円安による割安感の高まりが徐々にピークアウトすることに加え、中国経済の減速感が強まってくることから、訪日外国人の増加テンポは緩やかになるとみられるが、それでも近畿地域には860万人が訪れ、インバウンド消費は8764億円に増加すると予測する。

○近畿地域はすでに日本を代表する国際的な観光地であり、インバウンド消費は今後も増加が見込まれる。しかし、さらに発展していくためには、ゴールデンルートの西のターミナルという位置づけを享受するだけではなく、日本の文化、伝統を理解し、体験するのにもっともふさわしい観光地としてさらに飛躍することが求められる。

○近畿地域は、長らく日本の都が置かれた土地であり、神社仏閣、お城などの建造物や仏像などの歴史的遺産、和食や伝統芸能、古くからの工芸品など伝統的な文化遺産などさまざまな観光資源に恵まれている。日本という国、文化を知るには最も適した観光地であることが、これからもこの地に海外からの訪問者を引きつける力の源となろう。

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