トルコ経済の現状と今後の展望~ 中東・北アフリカ地域最大の新興国として注目されるトルコ ~

2015/09/03 堀江 正人
調査レポート

○トルコは、中東北アフリカ地域最大の経済規模を持ち、G20メンバーにもなっている有力な新興経済国である。トルコは、数年以内に人口でEU最大のドイツを上回ると見られ、また、共和国建国100周年となる2023年までに世界10大経済国に入ることを目指すなど、人口動態や経済規模の面で成長性に富んでいる。

○トルコは、かつて、輸入代替や保護主義などを軸とする閉鎖的な経済運営と、財政金融面の規律欠如が原因で、たびたび経済危機に直面してきた。しかし、2001年の通貨危機後に、IMFによる支援のもとで構造改革を実施し、脆弱な体質は是正された。

○リーマンショック後のトルコ経済は、金融緩和等を背景に急回復し、一時は成長率が10%を超えるほどであった。しかし、経済高成長の副作用として、2010~2011年にかけて経常赤字が大幅に拡大したため、当局は、2011年後半以降、引締めを余儀なくされた。

○米国の金融緩和終焉観測浮上や、トルコの政治情勢不透明感などを背景に、通貨トルコリラの為替相場が2014年頃から急速に下落しており、足元の対米ドル為替相場は史上最安値圏である。トルコ中銀が、インフレ抑制より景気拡大に軸足を移してしまったことやリラ安が進んだことなどが影響し、インフレ率は高めで推移している。ただ、原油安の恩恵もあって、インフレ率が一方的に上昇するようなことはないと見られる。2015年末のインフレ率は、当局のインフレ・ターゲット上限ぎりぎりの7%前後となりそうである。

○トルコ経済の大きなリスクファクターは、大幅な経常収支赤字と多額の対外債務である。トルコの経常赤字の対GDP比は、主要新興国の中では最大規模であり、また、対外債務の対GDP比率もかなり高い。さらに、短期対外債務の外貨準備に対する比率は100%を超えている。

○トルコ経済は、国際収支や対外債務の面で脆弱さを抱えているが、直接投資を中心とする資本流入を十分に確保しているかぎりは、実際に危機が発生することはない。トルコは、投資先としての魅力が高いことから、今後も外国からの投資を惹きつける可能性が高い。このため、トルコ経済は、中長期的に見れば、外国からの投資流入に支えられつつ成長を維持できると見られる。

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