コロンビア経済の現状と今後の展望~南米の「隠れた新興経済大国」コロンビア~

2015/11/06 堀江 正人
調査レポート
海外マクロ経済

○コロンビアは、ブラジルに次ぐ南米大陸第2位の人口を有する地域大国であるが、長らく反政府武装勢力のテロ活動で治安が悪化していたため、外国投資家から敬遠され、日本企業の撤退も相次いだ。2000年代になると、反政府武装勢力の掃討が進んで治安は大きく改善し、外資企業の投資拡大により原油や石炭の生産・輸出が増加した。これらを追い風に、コロンビアでは、2002年以降、景気拡大傾向が鮮明になった。

○コロンビアの経済運営で注目すべき点は、財政・金融政策の健全性である。コロンビアでは、1980~90年代に他の南米諸国で発生したようなハイパーインフレーションは発生していない。また、コロンビアの財政赤字や公的債務残高の対GDP比率を見ても、一定の範囲内に保たれ、財政規律が維持されている。さらに、コロンビアの銀行部門の経営指標を見ても、健全性が高く、破綻リスクは小さい。

○コロンビアの輸出品目は、かつては2/3がコーヒー豆だったが、今では2/3が鉱物燃料(原油と石炭)である。最大の輸出相手国は米国であるが、米国内のシェールオイル増産の影響で対米輸出は減っている。最近増加が目立つのは中国向け輸出である。中国は第2位の輸出相手国となり、対中輸出の9割が原油である。

○2014年秋以降、米国の金融緩和終焉観測が強まったことや、主力輸出産品である原油の国際価格が急低下したことを受け、通貨ペソの下落が進んでいる。2014年10月からの1年間で、ペソの対米ドル為替相場は、1ドル=2,000ペソから1ドル=3,000ペソへと50%も減価した。為替相場急落は、インフレ圧力を高め、それを防ぐための利上げが景気鈍化につながるとして、市場では警戒感が高まっている。原油価格下落は、為替相場だけでなく株価も押下げ、また、消費者のマインドも悪化させ、さらに、国有石油会社からの国庫納付金を減少させ政府に緊縮財政を余儀なくさせるなど、コロンビア経済にとってマイナス影響が大きい。

○コロンビアへの外国からの直接投資(FDI)流入は、治安情勢好転を受けて2005年以降大幅に増加した。石油関連の投資が拡大したほか、最近では、市場としての将来性に注目した小売りやサービス部門への投資も増えている。投資先としてのコロンビアの問題点は、峻嶮なアンデス山脈に阻まれ輸送が不便で道路インフラ整備も遅れていること、APECに加盟しておらずアジアとの経済連携関係が希薄なことなどである。

執筆者

facebook x In

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。