○日本の住宅着工は減少傾向にある。新しい耐震基準が導入された1980年以降について見ると、住宅着工はバブル崩壊を機に減少傾向に転じ、1997年の金融危機や2008年のリーマン・ショックなどを経て、2015年度には92.1万戸と1980年代後半の半分程度の規模まで水準を落としている。
○住宅需要は持家需要と借家需要に大別されるが、どちらも人口動態や年齢構成、志向の違いなどに左右され、地域による差も大きい。住宅需要は、世帯数の増加が頭打ちとなる中、持家取得の中心をなす20歳代後半~40歳代の比率が低下し、借家率の低い高齢者の比率が高まっていくことから、今後、持家需要、借家需要ともに減少テンポが加速し、住宅着工を押し下げる要因になると見込まれる。
○今後、住宅着工への影響が強まると予想されるのが、中古需要の増加である。これまで日本では中古需要はあまり大きくなかったが、今後は空き家の増加にともなって良質な中古住宅の供給も増加し、住宅着工を下押しする要因になると考えられる。
○本稿では人口動態と中古需要を説明変数とする計量モデルを作成し、利用関係別、地域別に住宅着工の予測値を作成した。これによると、今後も住宅着工は減少基調が続く見通しである。人口減少や高齢化が進む中で住宅の需要が縮小することに加え、良質な空き家の増加もあって中古住宅の取得件数が増加し、着工を押し下げる要因となる。2015年度時点で92.1万戸だった住宅着工は緩やかな減少基調で推移し、予測最終年度である2030年度には60.5万戸と60万戸台前半の水準まで減少しよう。
○他方、人口減少は空き家の増加という問題も引き起こす。今後、空き家の建て替え・滅却が劇的に進まない限り、空き家は増加し、空き家率も上昇が続くことになる。日本の場合、空き家の増加は中古市場の拡大だけでなく、放置物件の増加も意味する。したがって、今後は良質な中古住宅は残しつつも、不要な空き家を滅却し、新しい住宅を建てていくといった住宅ストックの新陳代謝の活性化と、それによる質の向上が必要不可欠となるだろう。中古住宅の流通市場の成長を妨げるものであってはならないものの、現在進められている空き家の有効活用を促す政策に加え、空き家の建て替えや滅却を促す様な一層の政策的後押しが期待される。
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