外資誘致の強化が望まれるイタリア経済~ビジネス環境の改善が急務~

2017/11/24 土田 陽介
調査レポート
海外マクロ経済
ヨーロッパ

○イタリア景気の低迷が長期化している大きな理由の1つに、経済成長の推進力と期待される輸出の不調がある。その理由として、輸出の主役である中小の製造業で高コスト体質が定着していることが指摘できる。

○イタリアの輸出競争力を向上させるためには、その担い手である中小製造業の活力を高める必要がある。特に労働調整の弾力化と企業の過剰債務の改善がキーポイントになるが、早期の改善は見込み難い。こうした中で、企業リストラの推進力(ドライビングフォース)として期待されるのが、外資である。ただ現状では、ビジネス環境の悪さが、外資のイタリア展開を阻んでいる。

○イタリア政府には、外資というリストラのドライビングフォースを引き寄せるためにも、行政手続きや法手続きの簡素化といったビジネス環境整備に尽力することが望まれる。もっとも、外資の中には「イタリアンブランド」という広告効果だけを狙う買収もある。外資の力を得ながらイタリアで生産し、輸出や雇用を増やすためには、産業の基盤を担う中小製造業でコスト面での構造改革を優先的に進めていく必要があるだろう。

○与党民主党(PD)は労働市場改革やビジネス環境整備など現実的な改革路線を主張している。他方で、有力政党の5つ星運動(M5S)などは、PDの主張する現実的な改革路線と真っ向から対立している。イタリアでは18年5月までに総選挙が行われる予定だが、改革に背を向ける民族主義政党が主張する政策では、イタリア経済は低迷を脱却できない。どの欧州の国にも言えることだが、持続可能な経済成長に向けた政権選択をするか否か、有権者の覚悟が試される局面にイタリアもまた差し掛かっていると言えよう。

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