○仮想通貨は約1,370種存在し、時価総額63兆円、取引高5兆円/日である。最大の仮想通貨はビットコインで、時価総額で全体の約4~5割を占める仮想通貨を代表する存在である。世界の株式時価総額ランキングにあてはめると、仮想通貨全体は4位、ビットコインは12位に相当する。
○ビットコインは、2017年に入り分裂を繰り返しているが、これにより設定された発行量の上限が有名無実化している。分裂を繰り返しながら価格が上昇する姿は、かつて発生した株式分割バブルに似ている現象と言える。
○ビットコイン価格は、2015年以降徐々に上昇し始め、2017年に入り上昇が加速し、2017年12月中旬に200万円を超え220万円(2万ドル)に達した。2万ドルは、2015年初の価格比約100倍で、これまで観測されたバブル現象の中でも、最大の価格高騰と評される17世紀のオランダのチューリップ・バブルを超える。2年程度でのチューリップ・バブルを超える価格高騰は、仮想通貨の価値判定が難しいと言えども、バブルと言わざるを得ない。ビットコインに類似した17~18世紀に発生した欧州の3つのバブルは、ピーク後短期間のうちに、バブル前の価格まで暴落していることから、ビットコインも短期間のうちに価格が暴落するリスクを抱えている。
○足元取引額が急増しているが、信用取引・先物取引が主導している。全世界の取引の7割、日本の取引の6割の取引は信用取引・先物取引である。価格が下落した場合、強制売却や追証を求められ、下げをさらに加速させるおそれもある。
○10BTC(約1,700万円)以上保有する投資家は15万と全体の0.6%程度しかいないが、ビットコイン全体の9割を保有している。1,000BTC(約17億円)以上の大口投資家となると1,700人しかいないにもかかわらず、全体の4割を保有している。ビットコインは大口投資家による寡占構造となっている。
○ビットコイン価格が50万円(4,500ドル)を超えた2017年10月以降、10BTC以上保有する投資家の売却が目立ち、足元まで約3,300億円以上売却している。一方、小口投資家はその間約5,000億円ビットコイン保有額を増加させていることから、仮にビットコイン価格が暴落した場合、高値づかみをした小口投資家に悪影響が及ぶ可能性が高い。
○しかし、大口投資家への影響も小さくない。大口投資家上位200名(保有額100億円)のビットコインを最初に購入した時期を見ると、2017年下期以降保有し始めた投資家は200名中87名であり、保有額は7.9兆円のうち2.6兆円を占める。そうした投資家は、取得価格が高く、かなり先物取引を活用している投資家も多いと思われる。従って、価格暴落の場合、こうした大口投資家が売りを加速させる懸念がある。
○ビットコイン価格は、大口投資家による相場操縦的な共謀の可能性を懸念する声も強い。しかし、改正資金決済法(通称:仮想通貨法)には、相場操縦やインサイダーといった不公正取引防止のための直接的な規制は規定されていない。
○ビットコインの価格・取引の信頼性を高めるためにも、法律上、不公正取引防止のための規制を規定すると同時に、日本だけでなく、全世界ベースでの価格・取引監視体制を構築する時期にきていると思われる。
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