○15歳以上人口がピークアウトしたにもかかわらず、わが国の労働力人口は5年連続で増加している。景気の回復を背景に人手不足感が強まり、企業が少しでも多くの労働力を確保するために、女性や高齢者でも働きやすい環境を整えた効果もあるだろう。生産年齢人口の男性は労働参加の進展余地が限られており、今後も労働力人口の増加は女性と高齢者が中心となると予想される。
○女性や高齢者の労働参加率が上昇していくことで、労働力人口は、2023年までは増加基調が続くと考えられる。2024年には減少に転じるが、減少ペースは緩やかで、2030年の労働力人口は6693万人と2017年の水準を27万人下回るにとどまる。就業者数は、2030年に向けて失業率が低下していくため減少ペースはさらに緩やかであり、2030年の就業者数は、2017年と比べて23万人増加すると見込まれる。なお、失業率は2017年度の2.8%から低下が続き、2030年度には2.1%に達すると予想している。
○労働力人口、就業者とも比較的高い水準を維持できる見込みであるため、経済成長が阻害されるほどの深刻な人手不足に陥るリスクは小さいように見える。しかし、経済への影響を考える上では、働く人の数だけでなく、労働時間も含めた労働投入量の動向が重要である。そこで本稿では、国立社会保障・人口問題研究所の人口の予測と、当社の中期経済見通し(2017年度~2030年)を使用し、労働参加率や労働時間など様々な雇用に関する条件を予測することで、2030年までの労働投入量を推計した。
○労働投入量は、就業者数の増加によって2020年まで増加し、その後も2022年までは横ばいで推移する。しかし、非正規雇用者比率の上昇によって1人あたりの平均労働時間が減少するため、労働投入量は2023年から減少ペースが速まり、2029年にはリーマン・ショック直後の2009年の水準を下回ると予想される。
○推計結果に基づけば、しばらくは労働力不足をそれほど心配しなくてよさそうだ。しかし、女性や高齢者の労働参加が順調に進むという仮定のもとでも、労働投入量が減少する事態は避けられない。労働投入量が本格的に減少するまでに残された時間はわずかしかなく、生産性を向上させる取り組みが遅れれば、その後の経済成長を阻害することとなるだろう。また、足元では、マクロの労働投入量は増えているにもかかわらず、一部の業種で人手不足が深刻化しており、労働需給のミスマッチの解消も課題であろう。
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