○今年8月に横浜で開催されるTICAD(アフリカ開発会議)を前に、世界最後のフロンティアであるサブサハラ・アフリカへの関心が日本でも高まっている。国連の人口推計によれば、サブサハラ・アフリカの人口は2035年に中国やインドを上回り、新興国地域の中でも突出した存在になると見込まれる。
○サブサハラ・アフリカは、高い潜在成長性を持つが、足元の経済成長率はアジア新興国よりもかなり低い。この一因として、投資が不十分である点が挙げられる。今後のサブサハラ・アフリカの経済成長には、投資の拡大が不可欠であり、特に、民間直接投資が重要である。
○サブサハラ・アフリカ諸国の貿易相手国として、中国の存在感の大きさが目立つ。サブサハラ・アフリカ諸国は、主として、鉱物資源、エネルギー、食糧などを中国へ輸出している。また、中国政府の「一帯一路」構想のもと、アフリカ全域で中国によるインフラ整備がさかんに行われており、そうした工事関連物資の中国からの輸入が増えたことが、サブサハラ・アフリカ諸国の対中輸入額増加に寄与したと見られる。
○サブサハラ・アフリカに対する政府開発援助(ODA)の主役は欧米諸国であり、日本の存在感はアジアにおけるほど高くはない。サブサハラ・アフリカ地域で日本のODA供与累計額が最も多い国はケニアである。最近、中国のアフリカ向け経済協力が増加していると見られるが、その実態はわかりにくい。
○サブサハラ・アフリカを含む新興国経済に影響を与える要因として見逃せないのが、米国金利動向である。もし、米景気が過熱して利上げピッチが加速するようなことになれば、サブサハラ・アフリカを含む新興国の経済にとって大きなリスクとなりそうだ。
○サブサハラ・アフリカ地域では、ナイジェリアやアンゴラなど産油国の経済規模が大きいため、原油価格動向が同地域の経済成長率に大きく影響する。今後、原油価格が急上昇する可能性は低いと見られ、サブサハラ・アフリカの産油国の景気が原油高によって大きく拡大するようなシナリオは期待しにくいようだ。
○JETROの調査によれば、サブサハラ・アフリカ諸国の中で、在アフリカ日系企業の注目度が最も高い国は、ケニア、第2位がナイジェリア、第3位が南アフリカであり、また、在アフリカ日系企業が今後アフリカで最も有望視するビジネス分野は、インフラ関連ビジネスとサービス業である。
○ サブサハラ・アフリカで人口の多い上位6カ国の政治経済状況を見ると、ナイジェリアやコンゴ民主共和国などの大国は、成長ポテンシャルに富んでいるが、国内の部族間対立やテロなどの政治問題を抱えており、外資企業が進出するにはリスクが高い。サブサハラ・アフリカの日系企業は、インフラが欧州並みに整備され経済運営が堅実な南アフリカに集積する傾向があり、今後も、南アフリカは、サブサハラ・アフリカへのゲートウェイとして多くの日系企業が拠点を構えるだろう。
○サブサハラ・アフリカは、ビジネス環境が厳しいため、短期戦ではなく長期戦で臨むのが基本戦略と言えよう。当面のビジネスは、資源開発が中心となろうが、今後は消費財やIT関連事業なども増えそうだ。他方、日系製造業の本格進出は事業環境が整っていないため時期尚早と言えそうだ。今後、「一帯一路」戦略のもとでサブサハラ・アフリカ地域での中国の存在感が高まる中、日本企業としては、中国にどう対抗あるいは協調するかといった点も考えながら、対サブサハラ・アフリカ戦略を練り直す必要がありそうだ。・・・(続きは全文紹介をご覧ください)
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