○長びく景気低迷や厳しい財政緊縮に対する有権者の不満を吸収する形で誕生したイタリアのコンテ政権は、その公約通りバラマキ政策を強化した。しかしそのバラマキ政策は、景気を加速させるどころか、設備投資の悪化や銀行の経営環境の悪化につながり、経済の成長力を弱めるという本末転倒な結果をもたらしている。
○イタリアの景気低迷が長期化している大きな理由の1つは輸出の不調にある。そして輸出の不調は、その担い手である中小の製造業が高コスト体質に苛まれているために生じている。その改善のためには労働調整の弾力化(労働市場改革)が必要になるが、それを実行すると一時的とはいえ失業や賃下げが急増し、景気が悪化する。その鎮痛剤として失業手当を増やすといった財政拡張は合理的であるし、むしろ容認されるべきである。
○ただコンテ政権による財政出動は、有権者の信認を得たいポピュリスト政党の下で行われる典型的なバラマキ政策である。特にクオータ100と呼ばれる年金制度の改変は、年金制度そのものの破たんを早めてしまう恐れがあると同時に、コンテ政権以前の政権が心血を注いで進めてきた構造改革路線を完全に覆す愚策に他ならない。
○反EUを唱える各国のポピュリスト政党は、多かれ少なかれイタリアのコンテ政権のようなバラマキ政策の実施をその公約に謳っている。ただそれを実行しても景気の拡大につながらないばかりか、むしろ生産面を中心に構造的な問題を深刻化させてしまうだけであることを、これまでのイタリアの経験は体現していると言えよう。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)
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