○日本経済は長らく持続的な物価下落であるデフレの状態にあった。しかし、第2次安倍内閣発足以降、CPIコアが前年比プラス基調に転じるなど、足元では少なくとも「デフレではない」状況にある。この背景には、景気回復の長期化、企業の人手不足感の高まりや政府による強い賃上げ要請を背景とした賃金の上昇、期待インフレ率の上昇などがあるとみられる。
○もっとも、足元のCPIコアの前年比は日本銀行が目標とする2%を下回っているなど、日本経済が再びデフレに陥る可能性を払しょくできておらず、政府はデフレ脱却宣言を行えずにいる。日本は海外と比べて特にサービス価格と家賃の上昇率が低くなっており、今後、物価上昇率を高めていくうえでは、それらの上昇が不可欠となってくる。
○家賃については、空き家の増加など構造的な問題もある中で賃貸住宅市場の需給は緩みやすく、上昇基調に転じるのは容易ではない。しかし、長い目で見れば、家賃は物価全般の動きと連動する面もあり、まずは家賃以外の物価が持続的に上昇していく環境を目指すことが重要と考えられる。
○サービス価格は賃金との関係が強く、日本では賃金の長期的な低迷がサービス価格の低迷につながってきた。今後、サービス価格が上昇していくには、賃上げと値上げの動きが併せて進んでいくことが必要不可欠であり、景気回復が続く中で企業の継続的な賃上げに期待するとともに、政府には企業が賃上げ分を価格に転嫁しやすいような環境の維持・整備が求められる。
○こうした中、近年の景気回復や賃上げにより、消費者の値上げに対する許容度が改善している点は、明るい材料である。他方、企業が物価の先行きに対してやや慎重な姿勢を示している点は、懸念材料である。企業が物価の先行きに対して慎重なままでは値上げが進まず、翻って賃上げも進まないリスクがある。
○企業が賃上げや値上げに前向きになるには、企業が日本経済の先行きに対して自信を深めることが必要である。政府としては、短期的な景気回復だけでなく、中長期的な視点に立って成長戦略を進め、日本経済の基礎体力である潜在成長率を高めていくことが重要と考えられる。そうした地道な取り組みを経てはじめて、デフレとの闘いに終止符を打つことが可能となるだろう。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)
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