○ハンガリーは、2013年以降、経済成長率がEU全体の成長率を上回る状態が続いている。ハンガリーの2018年の失業率は3.7%と、市場経済移行後で最も低い水準となった。このような、足元の雇用情勢の良好さが、雇用増加や賃金上昇を通じて個人消費拡大をもたらす主因になった。一方、EU予算を利用したインフラ投資が増加し、また、企業部門では、稼働率上昇を受けて追加投資が拡大、賃金上昇のために省力化投資も増加した。こうした動きを受け、固定資本形成の伸びが加速した。それらを背景として、2018年の経済成長率は、5.1%という高い伸びとなった。
○ハンガリーは、2000年代に財政規律が緩み、それを是正するための引き締めが原因で景気後退に陥ったが、2010年代になって財政規律を回復した。ただ、ハンガリーの財政赤字や公的債務残高の対GDP比率は、チェコやポーランドよりも高い。
○ユーロ発足(2002年1月)以降、ハンガリー通貨フォリントの対ユーロ為替相場は、中長期トレンドとして下落基調である。足元のフォリントの対ユーロ為替相場を見ると、ユーロ発足時点と比較して約2割減価しており、東欧主要三カ国(チェコ、ポーランド、ハンガリー)の通貨の中でフォリントの弱さが目立つ。フォリントの下落の背景としては、主にハンガリーの財政面の脆弱さが影響していると見られる。
○ハンガリーにとって、ユーロ導入のインセンティブは高くないと見られている。ユーロ導入は、独自の金融政策放棄を意味するため、経済運営上の裁量保持という観点から、早期導入の可能性は低いと見られる。
○ハンガリー経済の大きな特徴は、輸出依存度の高さである。ハンガリーの最大の輸出品目は乗用車であり、第2位の自動車部品とともに、2010年代に大きく増加した。また、第3位の輸出品目は、ガソリン・エンジンであり、上位輸出品目の1~3位を自動車関連が占める。
○ハンガリーの最大の輸出相手国はドイツであり、ドイツ向け最大の輸出品目は乗用車、続いて、自動車部品、ガソリン・エンジン、ディーゼル・エンジン、の順となっている。ハンガリーの輸出が、ドイツ向けの自動車関連品目に大きく依存していることが示されている。
○市場経済移行後のハンガリーの経済成長の原動力は、外国からの直接投資であった。その中でもハンガリー政府が重視するのは、製造業である。特に、700社もの自動車部品サプライヤーを中核とする輸送機器製造業は、ドイツをはじめとする西欧地域への輸出拡大の主な担い手として、また、雇用創出の担い手としても、ハンガリー経済に大きく貢献してきた。
○ハンガリーでは、西欧と遜色ないハイレベルの人材を格安の人件費で雇うことができる。しかも、ブダペストのワーカー人件費は、東欧主要四カ国(チェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー)の首都の中では最も低い水準である。これが、外資系企業のハンガリー進出の大きなインセンティブになっていると言える。
○在ハンガリー日系企業数は、2008年から2013年にかけて減少したが、その後は、また増加に転じた。2018年には、日系企業数が2008年の水準にほぼ回復しており、リチウムイオンバッテリーや、炭素繊維、研究開発施設などの新設・拡張といった新たな動きが続いた。
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