○日本の新設住宅着工戸数(住宅着工)は、近年やや持ち直しているものの、長い目で見ると、減少している。この間、住宅着工の蓄積である住宅ストックは年々増加しているが、同時に居住世帯のいない住宅も増えており、住宅ストックに占める居住世帯のいない住宅の比率を空き家率と定義すれば、2018年時点で14.1%にも上る。
○先行きの住宅着工を考えるうえで重要な要素のひとつは世帯数の動向である。日本の世帯数は増加が続いているが、今後、総人口の減少テンポが加速する中、国立社会保障・人口問題研究所によれば、世帯数も2020年代前半をピークに減少に転じる見込みとなっている。
○もうひとつの重要な要素は建て替え需要である。居住者の平均寿命の延びや中古住宅の活用が進む中、住宅の建て替えの必要性は後退しており、住宅が空き家となったり、取り壊されたりするまでの年数は年々長期化している。今後もこうした傾向は続くことから、築古の物件が増える中でも住宅の建て替えの必要性はあまり高まらず、残存年数も緩やかに長期化していく見通しである。
○このため、今後も住宅着工は減少基調で推移する見通しである。景気のサイクルや金利の変動といった短期的な要因による増減を均した住宅着工のトレンドを見ると、住宅の残存年数が緩やかに長期化すると仮定したベースランケースでは、2018年に約91万戸だった住宅着工は2030年には約66万戸、2040年には約46万戸へと半減する見通しである。
○空き家率については、地方圏を中心に上昇傾向で推移すると見込まれる。三大都市圏を中心に老朽化した住宅の取り壊しや建て替えがある程度進むことで急上昇は避けられるものの、2040年には17.4%へと高まる見通しである。
○住宅着工の減少は、住宅投資等の落ち込みを通じてGDPを押し下げる要因となる。しかし、エコ住宅等の質の高い住宅の供給やリフォームにより付加価値を高められれば、住宅投資等の落ち込みをある程度カバーすることは可能である。住宅の質の改善は、着工の減少による経済への悪影響を緩和し、人々の生活の豊かさも向上させる。政府には人々の質の高い住宅の購入やリフォームの実施を後押しするような政策を推進していくことが求められる。
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