わが国旅行収支の 中期展望 ~収支黒字は 2030年に3倍に拡大する可能性~

2020/01/15 丸山 健太
調査レポート
国内マクロ経済

○近年、貿易におけるサービスの重要性が高まっている。GDPベースでみると、2014年ごろから、サービス輸出が財輸出を上回るスピードで成長しており、今回の景気拡大局面では、財輸出と同程度、GDPの押し上げに寄与した。また、国際収支統計ベースでみても、2019年上半期は、半期として初めてサービス収支が黒字となった。

○サービス収支の動向を考える上で重要な項目として、「旅行」と「産業財産権等使用料」が挙げられる。いずれもサービス輸出に占める割合が高く、急速に黒字幅が拡大している項目であり、先に述べたサービス輸出の急成長とサービス収支黒字化の立役者である。本稿では、そのうち「旅行」に焦点を当て、2030年の姿を予測する。

○輸出に相当する旅行収支(受取)は、2010年代に入って大きく増加しており、今後も増加基調を維持しよう。訪日外国人数の増加が続くことに加え、娯楽等サービスへの支出増、アジア新興国からの旅行者の消費額の拡大、主要先進国・地域からの訪日客シェアの高まり等によって、一人当たりの平均支出額の増加が見込まれる。

○一方、輸入に相当する旅行収支(支払)は、ごく緩やかな増加で推移しよう。一人当たり支出額は微増となるものの、出国者数は人口減少が重荷となって伸び悩むため、旅行収支(支払)はごく緩やかな伸びにとどまる。

○この結果、2018年に4兆円の黒字であった旅行収支は、2030年に7.4兆円と、足元の約3倍まで黒字幅が拡大する見込みである。ただしそのためには、外国人の訪日需要喚起のための継続的な取組が不可欠である。

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