○日本では急速な高齢化の進展を背景に、社会保障給付費の増加が続いている。2017年度には120.2兆円となっている。社会保障給付費の内訳をみると、金額が最も大きいのは年金、医療である。福祉その他(介護、生活保護費等)は、年金や医療ほど規模は大きくはないものの、最近5年間の平均増加率は年金や医療を上回るペースで増加している。
○社会保障給付費の増加を受けて、年金、医療、介護では保険料率が引き上げられており、それと同時に公的負担も増加が続いている。公的負担の社会保障給付費に対する割合は、1990年代後半以降は上昇傾向にあり、社会保障給付のための財源として、保険料収入とともに公的負担の重要性が増している。社会保障制度改革は基礎的財政収支の黒字化実現の観点からも課題となっている。
○年金、医療、介護では、基本的には現役世代が納める保険料が給付の財源としての役割を果たしており、社会保障を通じて、現役世代から高齢者への所得移転が行われていると考えることができる。今後も、高齢化の進展に伴い、社会保障給付の増加とともに現役世代の負担も上昇していくと考えられる。
○政府の社会保障の将来見通し(2018年5月)によると、社会保障給付費のGDP比は今度も上昇が続き、その財源を確保するために、保険料率の引き上げが必要となる。政府が想定する賃金の上昇率は2028年度以降、名目GDP成長率を上回る2.5%と比較的高いため、賃金が政府の想定ほどには上昇しない場合、現役世代の保険料率は、政府の試算以上に上昇することになる。協会けんぽの場合、現状10%の保険料率が2040年度には13%程度まで上昇する可能性がある。
○政府は全世代型社会保障制度の構築に向けて、現在、改革の内容を検討しており、今年夏に最終報告をまとめる予定である。昨年末に公表された中間報告の内容をみると、一定所得以上の後期高齢者の医療費の自己負担割合を2割に引き上げることを除けば、多くの人にとって負担が大きく増えるようなものは含まれていないと言うことができる。後期高齢者の医療費の自己負担割合が2割となる対象者の所得水準は今後、検討されるが、負担面においても全世代型社会保障となるよう、ある程度の所得がある高齢者が負担するしくみとすることが必要であると考える。
○また、政府は、全世代型社会保障の構築に向けた改革を実施した場合に、将来の社会保障給付や負担がどのようになるのかについても示すべきである。さらには、社会保障と財政を一体のものと捉えて、財政収支の見通しについても合わせて試算すべきであると考える。
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