ミャンマー経済の現状と今後の展望 ~アジアのラストフロンティアとして注目されるミャンマー~

2020/03/18 堀江 正人
調査レポート
海外マクロ経済

○ミャンマーは、約50年にもわたり、国際経済界から隔離されたような状態に置かれていた。しかし、2011年の民政移管を受けて欧米諸国からの経済制裁が解除されたことを契機に、一躍、「アジアのラストフロンティア」として世界から注目される存在になった。海外からの開発援助や直接投資が流入し、また、ミャンマー政府が経済自由化に大きく舵を切ったこともあって、国内経済は活況を呈している。

○民政移管後のミャンマー国内消費市場は、軍政時代とは大きく様変わりしている。民政移管後の輸入規制緩和を受けて、中古車輸入が急増し、その後、中古車輸入規制が強化されたことで、新車の販売台数が増えてきた。一方、スマートフォンが急速に普及しており、ネットバンキングの普及ぶりは日本を上回るほどである。

○民政移管後、ヤンゴン市内では、オフィスや外資系高級ホテルなどの建設ラッシュとなった。また、ODAも再開され、ヤンゴン近郊の工業団地のインフラが円借款によって整備されたほか、鉄道や配電などの基幹インフラ整備も円借款によって進められている。こうした状況を背景に、ミャンマーの投資率が急上昇しており、近隣ASEAN諸国を上回るほどになった。投資拡大がミャンマーの経済成長を後押しするという形が出来つつある。

○ミャンマー通貨チャットの為替相場は、2012年に管理変動相場制へ移行後、8年間で半分に減価した。輸入需要が強いためドル買い圧力が高いことから、当面はチャット安基調が続くと見られる。チャット安によって輸入インフレ圧力が持続するため、今後、インフレ率が加速する局面もありうるだろう。

○ミャンマーは、約50年にもわたって、外国からの開発援助や直接投資から遠ざけられていた後遺症で、インフラが未整備であり、タイやマレーシアのような輸出型工業も育っていない。輸出の多くが付加価値の低い一次産品であるため、貿易収支は赤字であり、経常収支も赤字である。

○日本企業のミャンマーへの関心は高まっており、例えば、JBIC海外直接投資アンケートの有望事業展開先ランキングを見ると、ミャンマーは、民政移管後、ずっとベストテン入りしている。同アンケートにおける有望理由について検証してみると、ミャンマーが有望な理由として、「安価な労働力」が第1位であり、現時点では、専ら、労働集約型製造業の低コスト生産拠点として注目されていることがうかがえる。

○投資先としてのミャンマーの課題は、脆弱なインフラである。これを改善しなければ、直接投資流入拡大を通じた工業化推進による経済発展というシナリオが見込めない。特に問題となっているのが、電力不足であり、外資系企業のミャンマー進出のボトルネックになっている。

○インフラについては、円借款によって、鉄道、配電、都市開発などのセクターで整備が進行中であるが、そうした案件が一通り完成するのは、2020年代後半になる見込みであり、ミャンマーのインフラが、現在よりも一段とグレードアップした状態になるのは2030年頃になりそうである。こうしたインフラ整備状況を考慮すると、外資系企業が工場進出を本格化させ、ミャンマーが輸出型工業主導で経済発展を加速する段階に入るまで、あと10年ほどかかるものと見られる。

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