コロナ禍で懸念されるスペインの雇用悪化~望まれるEUからの潤沢な財政支援~

2020/06/30 土田 陽介
調査レポート
海外マクロ経済

○コロナ禍が深刻であった欧州では、特に南欧諸国の雇用悪化が懸念されている。スペインの場合、その家父長制的・家族主義的な性格の強さゆえに、若者の高失業が懸念される。

○さらに先の重債務危機で非合法ながらも就労の機会を提供し、失業を吸収した地下経済が、観光関連産業を中心に活力を失うと予想される。そのためコロナ禍に伴う雇用情勢の悪化は、重債務危機のときよりも深刻になる恐れがある。

○スペイン政府は雇用対策に努めているが、その結果、同国の財政はさらなる悪化を免れない。欧州連合(EU)も各国の雇用対策を支援するスタンスを強めているが、復興基金(recovery fund)のあり方などを巡り、事実上の持ち出し超過となるオランダなど北部諸国の反対は根強い。

○とはいえ感染の再拡大などが生じれば、現状の支援スキームだけで対応できるか定かではない。今回のコロナ禍は天災であり、景気と雇用の悪化もまた回避し得ないものである。反EUの機運を再燃させないためにも、EU各国は対立を乗り越えてコロナ禍が深刻な南欧諸国に対する支援に取り組む必要がある。

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