○欧州中銀(ECB)による大規模なパンデミック対応が欧州発の金融危機の波を食い止めたことに疑いの余地はない。ただこうした巨額の資産購入を推し進めたことで、ECBの資産購入策が抱えていた問題点、つまり実質的な財政ファイナンスが一段と深刻化したきらいは否めない。
○パンデミックという異常な経済環境を考慮すれば、財政ファイナンスの構図が強まることには致し方のない側面もある。問題は、こうしたアブノーマルな状況がいつまで続くのかということである。今回のパンデミックをきっかけに、通貨の暴落リスクや物価の急騰リスクを伴う財政ファイナンスを「なし崩し的」に正当化することが許されてしまっていいのだろうか。
○財政ファイナンス自体が問題を抱えているわけだが、その程度にも加盟国間でバラツキがあるという点は、ECBの資産購入策が抱える特有の問題といえる。財政ファイナンスの程度という点では日本の方がはるかに深刻であるが、欧州のような複雑な問題は抱えていない。またこの問題は、ECBが将来的にバランスシートの縮小を推し進めるうえでも大きなネックとなる。
○新型コロナウイルスの感染拡大はまだ収束の兆しが見えず、脆弱な経済環境の下で各国とも中銀による追加の資産購入は免れない状況にあるが、ECBの場合、その主役は間違いなく国債となる。パンデミック対応の名の下に財政ファイナンスが正当化されるようなムードが蔓延しているが、その常態化は本来なら財政規律の弛緩や通貨の暴落につながる。追加緩和の「のりしろ」を作るためにも、今一度、正常化の議論の必要性を認識すべきではないだろうか。
テーマ・タグから見つける
テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。