○ 近年、人工知能(AI)やロボット技術の進歩を背景とした第4次産業革命の波が押し寄せる中でデジタル化の重要性が再認識されるとともに、日本社会のデジタル化の遅れも明らかとなってきた。
○ この間、日本企業の設備投資は、建設投資等の非IT投資が増加傾向にあるのに対し、IT投資は長らく横ばいで推移している。IT投資が増加を続ける米国と比較すると、日本と米国とでIT投資がGDPに占める割合は遜色ないものの、IT資本の生産性は低くなっている。
○ 日本では、企業が既存の組織体制やビジネスモデルに囚われる中、付加価値を増やすような攻めの経営にITを十分活用できていないことで、IT投資によるGDPの押し上げ効果が海外と比べて限定的なものにとどまっている可能性がある。
○ 足元では、東京や大阪等を中心に緊急事態宣言が再発令されるなど、企業の設備投資を取り巻く環境は一層悪化している。しかし、コロナ禍が長期化する中で、ビジネスから日常生活までのあらゆる場面でデジタル化が加速していくため、企業としてはIT投資に力を入れていかなければならない局面が続くとみられる。このため、業績が厳しい中にあっても、企業のIT投資は今後も底堅く推移していくと予想される。
○ こうした中で、政府もデジタルニューディールを掲げ、デジタルガバナンス・コードの制定やデジタルトランスフォーメーション(DX)促進税制の創設など、民間による攻めのIT投資を後押しする姿勢を強めている。
○ 日本では、これまでITを省力化や業務プロセスの効率化といった守りの経営に活用してきた企業が多いだけに、すぐに攻めのIT経営へ転換することは難しいかもしれない。それでも、企業価値を高めるようなIT活用に乗り出す企業が少しでも増えることに期待したい。
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