- 新型コロナウイルスの感染が拡大したことを受けて、政府は2020年度に3度にわたって補正予算を編成した。その結果、国の一般会計の予算における歳出総額は当初の102.7兆円から第3次補正後には175.7兆円となり、大幅に増加した。もっとも、前年度からの繰越を加えた予算額すべてを2020年度中に支出できず、30.8兆円が2021年度に繰り越されることとなった。
- 2020年度の名目GDP成長率は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、-3.9%となったものの、国の一般会計の税収は過去最高の60.8兆円となった。内訳をみると、2019年10月に消費税率が引き上げられたことを反映して消費税収が増加して全体を押し上げた。もっとも、消費税収は新型コロナウイルス感染拡大前に編成された政府の2020年度当初予算における見積もりを下回っており、新型コロナウイルスの影響を受けたことがわかる。
- 2020年度の税収は過去最高となったものの、新型コロナウイルス感染拡大に対応するために歳出が大幅に増加し、2020年度の新規国債発行額は過去最大の108.6兆円となった。2020年度は名目GDPが大きく減少したこともあり、普通国債残高のGDP比は大きく上昇した。
- 新型コロナウイルスの感染拡大が財政収支に与えた影響を現時点でみるために、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」の2020年1月試算(コロナ前)と2021年7月試算(コロナ後)の比較を行うと、コロナ後の国の一般会計の税収等は、コロナ前に想定されていた水準から中長期にわたって下振れしている。
- 税収が新型コロナウイルス感染拡大前に想定されていた水準から下振れるなか、財政健全化に向けては歳出のコントロールが重要である。2020年度には巨額の繰越額が生じたが、近年、繰越額は増加傾向にある。その背景には景気動向に関わらず毎年編成される補正予算があり、補正予算が当該年度および後年度の歳出総額を拡大させていると考えられる。したがって、新型コロナウイルス感染終息後に財政健全化を計画的に進めるためには、災害への対応などを除き、歳出が増額となる補正予算の編成をできるだけ控える必要があろう。
- 今後は、脱炭素、デジタル化といった課題に対応するための歳出が増加すると考えられる。新型コロナウイルス感染終息後の財政健全化に向けて、当初予算だけでなく、補正予算も含め、歳出総額を適切に管理し、財政規律が緩むことがないようにすることが求められる。
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