収益低迷下での銀行再編の在り方~銀行界を超えた再編を考える時期に

2022/02/04 廉 了
調査レポート
金融
  • 銀行界は、2016年2月の日銀マイナス金利導入で預金金利が引き下げられない中、貸出金利の低下から収益低下が続いている。そこで政府・日銀は、経営基盤強化策として、銀行の統合・合併を「独占禁止法」適用から除外したり、「金融機能強化法」を改正し、統合等費用を補助する政策を打ち出した。日銀も、経営改善予定の銀行に0.1%の金利上乗せ制度を創設している。しかし、地域の銀行再編が活発に進んでいるとは言い難い。
  • 実は、銀行の再編を促す「金融効率化行政」の考えは、1960年代後半に当時の大蔵省澄田銀行局長の下、高度成長の終焉に伴う資金需要の減退から、金融機関の経営効率化を進める方針として打ち出されていた。だが、1970年代の合併は、1973年の太陽銀行・神戸銀行(合併後、太陽神戸銀行)など2件のみだった。1970年代後半に統合・合併が進まなかったのは、銀行や顧客とも低成長期における銀行の経営や制度を変える認識が強く、第二次石油ショックによる経済環境の悪化から、統合・合併はますます難しくなったと推察される。
  • 1970年代後半に「金融効率化」が進まなかったことは、日本の銀行の低収益性を残存させることとなった。1970年代後半からの10年間では、全国銀行の預貸金利鞘は2.0%以上と同時期の米銀とほぼ同水準だった。しかし、円高不況やバブル崩壊を経て、2018年には1.0%を下回る水準にまで低下したため、利鞘を維持した米銀との収益性格差が発生・拡大した。こうした利鞘の悪化には、オーバーバンキング構造など、「金融効率化」が進んでいない事情が反映されていると見られる。
  • 「金融効率化」促進策が中々効果を発揮できない中で、銀行の経営基盤弱体化が進展し、コロナ流行の影響で交通や観光業界等で苦境に陥る企業が続出している。こうした事態を打開するべく、金融機関だけでなく産業界を巻き込んだ大がかりな制度改革を検討する時期に来ている。

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