コロナ禍で2020年度に大幅に増加した日本の財政支出~政府の給付により 2020 年の家計所得は先進5か国の中で米国に次ぐ高い伸び~
2022/04/18 中田 一良
調査レポート
社会保障制度
社会政策
- 新型コロナウイルスの感染が拡大し、日本では感染拡大を防止するために経済活動に制約がかけられ、その影響を緩和するために2020年度に経済対策が実施された。このため一般政府の歳出額は大幅に増加した。
- 歳出の内訳をみると、2020年度に大幅に増加したのは家計や企業への給付金等である。具体的には1人につき10万円が支給された特別定額給付金、中小企業や小規模事業者向けの持続化給付金、雇用調整助成金等である。分野別にみると、「経済業務」、社会保障関連の「社会保護」、医療関連の「保健」で増加額が大きかった。
- 2020年の一般政府の歳出のGDP比の上昇幅(2019年との差)を新型コロナウイルス感染拡大に対応するための財政支出とみなして、先進5か国間で比較すると、日本は米国、英国よりも小さいものの、ドイツ、フランスよりも大きい。上昇幅の内訳をみると、いずれの国においても家計や企業への給付金が中心となっている。
- 政府の給付金が家計と法人企業の可処分所得に与えた影響をみると、家計については、先進5か国の中で2010年代後半に増加率が最も低かった日本は、政府の給付金により2020年は米国に次いで高い増加率となった。法人企業については、日本は、米国や英国ほど大きくはないものの、政府の給付金が可処分所得の減少の緩和に寄与した。
- 日本では2020年度に家計や企業への給付金等を含む経済対策の実施のために大規模な補正予算が編成されたものの、支出済歳出額は確保された予算額を下回り、国の一般会計では30.8兆円の繰越金が発生した。予算額の確保の背景には巨額の国債発行があり、日本の普通国債残高のGDP比は2020年度に大幅に上昇した。
- 足もとでは食料やエネルギー資源の国際価格が上昇しており、国内では物価が上昇している。政府は物価高騰に対応するため、総合緊急対策を4月中にまとめる方針である。困窮者への迅速な給付などを理由として2020年に支給された特別定額給付金は、結果的には全体としてみると過大な給付であったという見方もできる。コロナ禍で財政規模が拡大する中、財政規律が緩む可能性があるが、政府がまとめる総合緊急対策が過大な支援策になることは避けるべきであると考える。
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