化石燃料の「脱ロシア化」を目指すEU

2022/06/17 土田 陽介
調査レポート
海外マクロ経済
  • 2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した。この事態を受けて欧州連合(EU)は、ロシア産の化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の利用を段階的に取りやめる方針を決めた。化石燃料の輸出で潤うロシアの財政にダメージを与えて戦争の継続を難しくすることや、安全保障の観点からロシア産の化石燃料に対する依存度を低下させることがその主な理由である。
  • 石炭の「脱ロシア化」に関しては、EUにおける域内生産比率が高いこと、そもそも使用そのものを削減する方向にあることから、世界及び日本経済に対して大きな影響を及ぼすことは無いと予想される。
  • 石油の「脱ロシア化」に関しては、EUが調達先を多様化させる観点から、これまで距離を置いてきた中東に接近する可能性が考えられる。一方で安価なロシア産の原油を新興国が積極的に購入すれば、その分だけロシア以外の国が生産した石油に対する新興国の需要がはく落する。そのため、「脱ロシア化」の原油価格に対する押し上げ効果は徐々に弱まると考えられる。
  • 天然ガスの「脱ロシア化」に関しては、EUが需要家として、液化天然ガス(LNG)の市場に今まで以上に積極的に参入することになる。そのため、日本のLNGの調達先である中東や豪州などで、天然ガスの調達競争が激しくなると考えられる。日本のみならずLNGを輸入する諸国は、EUの脱ロシア化に伴う価格変動の影響を多大に受けると予想される。

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