日本におけるRCEPを利用した輸入の現状~主な利用は中国、韓国からの繊維製品、化学製品~

2022/12/22 中田 一良
調査レポート
国内マクロ経済
  • 日本、中国、韓国、ASEAN加盟国などが参加する経済連携協定(Economic Partnership Agreement、EPA)である、地域的な包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership、RCEP)が2022年1月に発効してから約1年が経過した。日本はRCEPにおいて、工業製品では化学製品、繊維製品、皮革製品、非鉄金属、農林水産品では冷凍野菜や調製品などで関税の削減を行っている。
  • RCEPを利用した輸入額を原産地別にみると、中国と韓国のシェアが高い一方、これら以外の参加国のシェアはごくわずかにとどまる。品目別にみると、関税引き下げの内容を反映して、繊維及びその製品、化学工業生産品、プラスチック・ゴム及びその製品のシェアが高い。中国、韓国からの輸入におけるRCEPの利用割合は、品目によってばらつきがみられるものの、農産物・水産物・食料品、繊維及びその製品などで高く、これらの品目でRCEPが積極的に利用されていることがみてとれる。
  • 中国、韓国以外のRCEP参加国からの輸入では、RCEPよりも前に発効したEPAがよく利用されており、ベトナム以外ではRCEPは現時点ではほとんど利用されていない。ベトナムは、RCEPを含めると日本と4つのEPAを締結しているが、関税引き下げの観点からはRCEPを選択することのメリットは小さく、日本とベトナムの間で最も早く発効した日ASEAN・EPAが最もよく利用されている。
  • こうした中、ベトナムからのRCEPを利用した輸入の品目構成をみると、繊維及びその製品が中心となっている。関税引き下げの条件である原産地規則との関係で、RCEPは、他のEPAを利用できない場合に利用される可能性が高く、他のEPAを補完する役割を果たしていると推察される。
  • RCEPの影響を品目別にみると、幅広い品目でRCEPが利用されており、関税負担の軽減というメリットが生じている。中でも、もともと日本の輸入における中国のシェアが高い品目である化学工業生産品、繊維及びその製品、履物・帽子等でそうした傾向がみられる。
  • RCEP において適用される関税率は今後も段階的に引き下げられるため、長期的な観点からは関税引き下げに伴う関税負担軽減効果は小さくない。関税引き下げに伴って利用割合が高まっていけば、その効果はより大きくなるだろう。

続きは全文紹介をご覧ください。

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。