- 政府の予算は、支出時期を翌年度まで繰り越すことはできるものの、基本的には単年度主義が採用されている。このため、政策課題に対して、政府が長期にわたって支出を行うことを約束することが難しい。基金はこうした日本の予算制度がもつ弊害を是正するものとして、活用されている。
- 基金事業は基金が設置された法人に委ねられて長期にわたって実施されるため、効率的に実施されているかを検証する必要がある。このため、政府は、2013年度に基金事業について「基金シート」を作成することとし、2014 年10 月には政令を改正し、基金が設置された法人が基金の額や事業の実施状況を所管府省に報告し、基金の額が過大であると所管府省が認めた場合や基金が廃止された場合には全額または一部を国庫に返納することとなった。このように、基金の適正化に向けた取り組みが行われてきた。
- 基金の残高を地方公共団体に設置されたものと公益法人等に設置されたものに分けてみると、地方公共団体に設置された基金では、東日本大震災からの復旧・復興に関する基金の残高が減少していることを背景に、2015年度末から2021年度末にかけて4割減少した。他方、公益法人等に設置された基金の残高は2019年度末までは緩やかな減少傾向にあったが、2020年度末には前年の4倍近くの規模となり、2021年度末にはさらに拡大した。このような増加は、2020年度以降に実施された大型の経済対策の中に政府から基金向けの支出が盛り込まれていたためである。
- 経済対策の実施により設置された基金としては、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて売上が減少して融資を受けた中小企業への利子補給のためのものや、日本が抱える課題である脱炭素の推進のためのものや、サプライチェーンの強化のためのものがある。これらの基金は、従来から存在する基金と比較すると、残高が大きいという特徴がある。
- 政府がまとめた「新経済・財政再生計画改革工程表2021」では基金事業に対するPDCAを強化するとされており、その取組状況が2023 年度上半期にフォローアップされることになっている。規模が大きな基金が増加し、基金事業に対するチェックの重要性が高まるなか、PDCAが強化されるだけでなく、それが実効性のある形で機能することが期待される。
※(2023年11月13日訂正)レポート中に以下の通り誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。
・表紙(第3段落)
正:2019年度末までは緩やかな減少傾向にあったが
誤:2019年度末までは横ばいで推移した後
・5ページ(第2段落)
正:2019年度末までは緩やかな減少傾向にあったが
誤:2019年度末までは横ばいで推移した後
訂正箇所一覧は正誤表をご確認ください。
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