- 日本経済がコロナ禍での落ち込みから回復に向かう中、企業の人手不足感が強まっており、日銀短観(2023年3月調査)の雇用人員判断DIはコロナ禍前と同程度の水準にまで低下している。2022年時点で企業の未充足求人は約130万人に上り、業種としては宿泊・飲食や運輸・郵便等、職種としては輸送・機械運転や建設・採掘、販売等で特に人手不足が深刻である。
- 特に近年、人手不足が深刻化している背景には、経済成長につれて労働に対する需要が高まっている一方で、労働者1人当たり労働時間の減少等を受けて労働供給が趨勢的に減少傾向にあることが挙げられる。
- 先行きを展望すると、今後、人口減少と高齢化の進展が見込まれることから、自然体では労働力人口や就業者数が毎年50万人規模で減少していくと見込まれる。加えて、労働者1人当たりの労働時間も、非正規雇用の増加や働き方の変化等を受けて減少傾向が続くとみられ、両者を掛け合わせた労働投入量は一段と減少していくと予想される。
- これまで日本経済は労働供給が減少傾向で推移する中でも、労働生産性を引き上げることで、緩やかながらも成長を続けてきた。しかし、近年、労働生産性の伸びは徐々に鈍化しており、今後もこのトレンドが続くようだと、労働投入量の減少分をカバーできず、マイナス成長に陥る可能性も高まっていく。
- こうした事態を回避するには、女性を中心に人々の労働参加率を一段と高めるほか、雇用者の正規化を進めることで労働者1人当たりの労働時間の減少を抑制し、労働投入量の減少ペースを緩和することが不可欠となる。
- 労働生産性についても、足元で世間を賑わせているOpen AIによるChat GPTのような新しい技術やサービスを上手に活用することで、再び伸びを高めていくことが期待される。また、政府にはイノベーションにつながるような研究開発を後押ししていく姿勢が一段と求められるだろう。
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