- ヨーロッパでは、欧州中央銀行(ECB)によるハイピッチでの利上げを受けて、実体経済に対する下押し圧力が高まることへの警戒感が広がっている。注視すべき問題の一つに、住宅市場の調整がある。すでにヨーロッパの住宅市場は調整過程にあるが、今後もECBが金融引き締めを継続することに加えて、景気が停滞し住宅需要が低迷することから、ヨーロッパの住宅市場の調整はさらに強まるだろう。
- 住宅市場の調整リスクが大きい国は、金利上昇と価格下落の両面でリスクを抱えるドイツ、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガルである。最も調整リスクが深刻な国はオランダだが、ヨーロッパ経済全体への影響という観点に鑑みれば、経済規模が大きいドイツの住宅市場の動向に注視すべきである。同国の住宅市場で調整が強まると、その経済規模の大きさゆえに、ヨーロッパ全体の景気が下押しされるだろう。
- またEU各国の銀行は、住宅市場の調整が進むことを受けて、住宅ローンの不良債権を増加させると考えられる。住宅ローンの不良債権の増加は銀行の経営を圧迫するが、一方で欧州連合(EU)各国の銀行がリーマンショック後に自己資本を手厚くしたこと、住宅ローンの不良債権は流通市場が発達しているために処理しやすいことなどから、本格的な経営不安に陥る銀行は限られるだろう。
- とはいえ、一部の銀行の経営悪化を受けて投資家が疑心暗鬼となった場合、ヨーロッパの金融市場は混乱に陥る恐れがある。それにヨーロッパでは、商業用不動産部門でも、住宅市場と同様の調整圧力が生じている。本格的な金融不安を呼び起こす可能性を持つ一つのリスク要因として、今後もヨーロッパの住宅価格や不動産価格の動向を注意深く見守っていく必要がある。
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