インドネシアが資源ナショナリズムの動きを強めている。2020年1月にニッケル、23年6月にボーキサイトの未加工鉱石の輸出が禁止され、24年5月には銅・鉄鉱石・亜鉛・鉛などの未加工鉱石の輸出も禁止となる見通しである。
インドネシアが鉱石の輸出を禁止する背景には、いわゆる「中所得国のわな」に陥り、1人当たりGDPが伸び悩んでいることがある。インドネシアで豊富に採掘される鉱石を活かし、製錬・加工工程の企業や最終製品を製造する企業を海外から誘致し、国内製造業の高付加価値化を目指している。
未加工鉱石の禁輸政策のうち、最も効果を発揮しているのがニッケルである。インドネシアのニッケル生産量が世界でも突出して多いことに加え、電気自動車(EV)向けバッテリーの主要原料として需要が急拡大しているためである。加えて、インドネシア政府が実施するEVおよび部品の生産拠点設置に対する税優遇措置は、インドネシア国内のEVに関するサプライチェーン構築を促進している。
日本の鉱物輸入にインドネシアの輸出規制が及ぼす影響は軽微である。しかし、今後、世界的にEV生産が拡大する中で車載電池用のニッケル需要が増加した場合、ニッケルを調達しにくくなるリスクには留意が必要であろう。
なお、インドネシア政府のこうした禁輸措置は自由貿易協定に違反するとの指摘もあり、今後、変更が生じる可能性もある。また、2024年のインドネシア大統領選挙を経た方針転換や、鉱山開発による環境問題での計画変更を迫られるリスクも残されている。
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