- 社会保障給付費は、年金、医療、介護を中心に長期的にみると増加が続いている。給付の増加を背景に社会保障負担も増加している。
- 社会保障の給付について、世帯主の年齢別にみると、現物給付(医療サービスなどを利用した際にかかる費用のうち自己負担以外の部分)は75歳以上で最も大きくなっており、その7割は医療である。残りの3割を占める介護給付も他の年齢層と比較すると大きい。現金給付は65歳以上で大きく、そのほとんどは年金・恩給である。
- 税・社会保険料の所得比を世帯主の年齢別にみると、65歳以上は65歳未満と比較すると低い。これは、65歳以上では、年金保険料を払い終わっている人が多いことや、65歳未満と比較すると所得水準が低く、税負担も低くなっているためである。
- 社会保障給付額から税・社会保険料を控除した額を当初所得で除したものは再分配係数と呼ばれる。再分配係数がプラスであれば、給付が負担を上回っている。再分配係数の推移を世帯主の年齢別にみると、社会保障制度の主な支え手となっている59歳以下ではマイナスとなっており、振れはあるものの、長期的には低下している。内訳をみると、給付全体の当初所得比が2010年代に入って低下していることに加えて、税・社会保険料の当初所得比が上昇していることがその要因である。他方、主な社会保障受給者である75歳以上ではプラスとなっており、振れを伴いながらも、長期的にはやや上昇している。
- 増加が続く社会保険料のうち介護保険料について、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」等に基づき、機械的な将来試算を行うと、介護サービス利用者の増加を背景に介護費用は今後も増加すると見込まれる。他方、被保険者は40~64歳を中心に減少するため、一人当たりの保険料は2024年度と比較すると1.45倍程度に増加する結果となった。
- 今後も高齢化の進展を背景とする社会保障給付の増加に伴って、社会保険料も増加が続く可能性が高い。社会保障制度の主な支え手となっている現役世代の減少が今後も続く中、社会保障負担の増加を抑制するためには医療、介護における給付と負担のあり方について不断の見直しが必要であると考えられる。
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