交渉が予定されているEPAで期待される効果~GCC、バングラデシュ、交渉が求められているメルコスールについての検討~
2024/04/19 中田 一良
調査レポート
国内マクロ経済
- 日本はすでに貿易額の約8割を占める国・地域とEPA等の貿易協定を締結しているが、未締結国の中で貿易額が大きな国・地域には資源国が比較的多い。そうした中、2009年以来中断していた、日本とアラブ首長国連邦などが加盟しているGCCとの間のEPA交渉を2024年に再開することが2023年7月に決定した。また、2024年3月にバングラデシュとのEPA交渉を開始することが決定した。
- 日本は、GCC加盟国との貿易では主に自動車を輸出する一方、原油などの鉱物性燃料を輸入している。GCCでは基本的には一律5%の共通関税率が用いられており、日本が輸出する自動車にも5%の関税がかけられている。今後、EPA交渉がまとまってGCC加盟国が自動車に対する関税を引き下げると日本にとって輸出環境が改善するとともに、エネルギー資源の安定的な確保につながると期待される。
- 日本の2023年のバングラデシュとの貿易規模は小さいものの、2010年代に入ってからそのシェアは輸出、輸入とも上昇傾向にある。バングラデシュとEPAが締結されれば、バングラデシュからの輸入のほとんどを占める衣類の関税負担は、EPAが締結されない場合と比較すると軽減されることになるだろう。他方、バングラデシュではほとんどの品目に関税がかかっており、EPAが締結されてバングラデシュの関税が引き下げられると、日本からの主な輸出である輸送用機器、鉄鋼、石油製品などでその恩恵を受ける可能性がある。
- これら以外に、日本経済団体連合会は、ブラジルなどが加盟しているメルコスールとのEPAの締結を求めている。日本とメルコスールとの貿易では、日本は自動車部品などの輸送用機器を輸出する一方、穀物、鉄鉱石等の原材料などを輸入している。日本では穀物や肉類に関税をかけており、EPA締結によって関税負担が軽減される可能性がある。日本からメルコスールへの輸出については、自動車部品などで関税が引き下げられて、輸出環境が改善する可能性がある。
- 今後、日本がEPA交渉を行うにあたっては輸出の増加という観点だけでなく、資源の安定的な確保という観点も重要になると考えられる。この点で、日本がエネルギー資源の多くを依存しているGCCとのEPA交渉は非常に重要である。また、現時点では予定されているわけではないものの、日本が穀物や資源を依存する割合が高いメルコスールとのEPA交渉も検討に値するだろう。今後、開始されるGCC、バングラデシュとの交渉においては、EPAがより大きな効果を生み出すために、幅広い分野において経済関係の強化を図るとともに、高水準の関税撤廃率を目指すことが期待される。
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