- 日本の消費者物価は、2022年以降、日本銀行が目標とする前年比2%を上回る高い伸びが続いている。この原動力となったのが、日銀が「第一の力」と呼ぶ原油価格の高騰や円安の進展等による輸入価格の上昇と、「第二の力」と呼ぶ人件費の増加を受けた価格転嫁の動きである。
- 総務省「令和2年(2020年)産業連関表」をもとに、「第一の力」として円安と原油高が消費者物価に与えるインパクトを試算すると、為替相場において10%の円安が進んだ場合には1.0%pt程度、また原油価格が10%上昇した場合には0.2%程度、消費者物価が押し上げられるとの結果が得られる。これに対し、「第二の力」として、賃上げによって一国全体の人件費が1%増加した場合には、0.3~0.4%pt程度、消費者物価が押し上げられると試算できる。
- もっとも、足元では日米の金融政策が転換するとの観測の高まりを受けて、これまでの歴史的な円安から円高へとトレンドが変わりつつあり、今後は輸入価格が下落することで「第一の力」は消費者物価を押し下げると考えられる。深刻な人手不足を背景に賃上げの動きは続くと期待されることから、今後も「第二の力」は、消費者物価を押し上げるものの、両者の力を合わせた消費者物価の押し上げ圧力は2024年度の1.3%ptに対し、2025年度には0.2%ptまで縮小する見込みである。
- 足元では需給ギャップがマイナスかつ悪化傾向にあるなど、マクロの需給動向は決して良くはない。そうした中で「第一の力」が逆回転し、「第二の力」による物価上昇圧力を減殺することになれば、消費者物価は伸び悩むことになる。2025年度には政府の物価高対策が剥落する影響を加味しても、消費者物価上昇率は日銀が目標とする2%を再び割り込むとみられ、金融政策の正常化には逆風となるだろう。
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