法人税関係の租税特別措置とその政策評価~政策評価における質の向上が課題~

2024/10/11 中田 一良
調査レポート
税制
  • 日本の税制における基本原則は「公平・中立・簡素」であるとされる。租税特別措置は、経済政策、社会政策などの政策的な理由に基づき、この基本原則の例外と位置づけられるものである。法人税関係の租税特別措置の中には、経済政策上の目的を実現するために、一定の条件を満たした企業に対して税負担の軽減といったインセンティブを与えることを通じて、企業の行動に影響を与えようとするものがあり、研究開発税制や賃上げ促進税制がそれにあたる。
  • 法人税関係の租税特別措置の適用法人数は増加が続いている。2022年度の適用法人数は146万法人であり、資本金が1,000万円以下の法人が全体の8割を占めている。適用件数が多い措置は「中小企業者等の法人税率の特例」であり、全体の半分近くを占める。2022年度の法人税関係の租税特別措置に伴う減収額は2兆3,015億円であり、2011年度以降では最大となっている。
  • 各府省は、法人税関係の租税特別措置の新設、拡充または延長を要望する際に、その措置について事前評価を行わなければならないことになっている。総務省は、各府省が実施した事前評価の客観性及び厳格性について、8つの項目を設けて5段階評価により点検を実施している。2023年度の点検結果によると、過去の適用件数など実績に関する項目で評価が高い措置が多い一方、過去の効果や将来の適用件数をはじめとする将来に関する項目で評価が低い措置が一定割合存在している。こうしたことから、各府省が実施している租税特別措置についての事前評価は全体としてみると質的な側面では改善の余地があると言えるだろう。
  • 政府は財政分野において、証拠に基づく政策立案であるEBPM(Evidence-Based Policy Making)を活用する方針を示している。今後はEBPMの推進により租税特別措置についての政策評価における質が向上するとともに、政策評価が租税特別措置の見直しに積極的に活用されることが期待される。

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