EUとの通商摩擦の裏で親中の中東欧諸国に足場を築く中国~中東欧に雇用を生み出し所得を増加させることができるかがカギ~
2024/12/12 土田 陽介
調査レポート
海外マクロ経済
金融
- 中国は、EU全体向けのFDIを減らす一方で、親中の中東欧諸国にFDIを投下し、EU市場への足場を築いている。今後もEU加盟国ではハンガリーが、非EU加盟国ではセルビアが、中国からのFDIを受け入れる中心地になると考えられる。
- 一方、親中ではない中東欧諸国に関しては、今のところは欧州委員会の意向もあって、基本的に中国と距離を置く方針であるため、少なくとも短期的には、中国からのFDIは増えにくいだろう。しかし景気低迷や内外での政権交代などの環境変化を受けて、親中ではない中東欧諸国からも、親中へと路線転換し中国からのFDIを歓迎する国が出てくる可能性が意識される。
- 中国にとっての最大のリスクは、中東欧諸国の中で反中姿勢が強まることにある。中東欧諸国で親中の国を増やしたいのなら、中国はFDIの投下を通じて各国の経済成長を支援し、雇用や所得を増やしていく取り組みを進める必要がある。インフラ開発を支援するにしても、中国国営の建設企業にだけ事業を任せるのではなく、地場の民族資本企業を参画させることが望ましい。
- なお所得水準が上昇した中東欧諸国は、消費財市場としての魅力を高めている。そのため日系企業としては、密接に供給網を形成している中国や韓国の企業と取引の兼ね合いで進出するのみならず、中東欧諸国を、消費市場としての期待で進出する余地があるものと考えられる。その際、日系企業に問われることは、中東欧諸国に雇用や所得をもたらす姿勢にほかならない。
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