○日本の国と地方の基礎的財政収支は、1990年代前半以降、赤字が続いており、2009年度以降は、赤字幅は大きく拡大した。それに伴い、国と地方の長期債務残高は急速に増加している。社会保障基金を含めた一般政府ベースの債務残高のGDP比は、先進国の中で最も高い水準にある。
○厳しい財政状況の下、財政の持続可能性を確保するとともに、社会保障の安定財源を確保するため、社会保障と税の一体改革が実施された。消費税率が5%から10%に引き上げられると、消費税収は14.1兆円増加すると見込まれている。このうち、一部は社会保障向け支出に充てられることから、財政赤字は最大で10.5兆円減少すると考えられる。
○今後、デフレから脱却すれば、名目GDP成長率が高まり、歳入の増加を通じて基礎的財政収支が改善すると期待されている。もっとも、歳入が増加するには、物価が上昇するだけでなく、実質GDP成長率を高めることも重要である。また、今後、物価上昇により歳出が拡大すると見込まれるうえに、税収が増加するとそれに伴って歳出増加圧力が高まることも予想される。デフレ脱却後は、財政健全化に向けて歳出をコントロールすることがいっそう重要になると考える。
○近年の歳出の増加は主として社会保障関係支出によるものであり、その背景には社会保障基金の財政の悪化がある。今後、高齢化の進展に伴って社会保障関係支出の増加が続くと、財政赤字拡大要因になると見込まれる。OECD加盟国の中の社会保障の給付と負担の平均的な関係をみると、日本は給付と負担のバランスが欠けており、財政健全化のためには社会保障改革が不可欠である。
○日本は、過去にも基礎的財政収支の黒字化を目標としながらも、景気の急激な悪化などのため、その時期を先送りし、債務残高の増加が続いた。財政健全化は後ろ倒しにすればするほど、その実現がいっそう難しくなるだけに、2020年度の基礎的財政収支の黒字化に向けて、早期に取り組むべきである。
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