○近年、日本を訪れる外国人旅行者の数は増加傾向にあり、2014年には1341万人と過去最高を更新した。外国人旅行者の約8割はアジアからの旅行者であり、上位は台湾、韓国、中国の3国が占めた。こうした、アジアからの旅行者は観光目的での訪日が多く、1週間程度の比較的短期の滞在が多い傾向がある。
○訪日外国人の増加に伴って、インバウンド消費も増加傾向にある。2014年のインバウンド消費(名目GDPベース)は1兆6361億円と過去最高となり、外国人旅行者1人あたりの消費額(消費単価)も2014年は12万8470円と増加した。とくに足元では、円安の進展や免税制度の拡充を背景に、買物代が増えている。国籍別に見ると、中国人旅行者の消費額が最も多く、2014年の旅行中支出は4975億円と推計される。これは2位の台湾(2564億円)、3位の韓国(1817億円)を大きく上回る数字であり、統計からもいわゆる「爆買い」の様子を確認できる。
○地域別のインバウンド消費額(旅行中支出)を推計すると、2014年は関東地方が9671億円と最も多く、近畿(3516億円)、中部(1128億円)と合わせたゴールデンルートでは1兆4315億円と全体の約8割を占めている。また、都道府県別の推計では、最も多いのは東京都の7537億円であり、関東地方の8割弱、全体の4割強を占めている。近年、訪日外国人数は増加傾向にあるものの、訪れるのはゴールデンルートや北海道、沖縄といった一部の観光・リゾート地に限られており、それ以外の地方にまでインバウンド消費の恩恵は十分に行き渡っていない。
○政府は2020年に2000万人、2030年に3000万人を目標に外国人旅行者の誘致を進めているが、現在のようにゴールデンルートに需要が集中する状況が続けば、いずれ宿泊・観光施設の収容能力は限界を迎えることになる。このため、日本が観光立国を推進していくうえでは、地方に足を向かわせる戦略が必要不可欠となる。しかし、初めて日本を訪れる外国人旅行者をゴールデンルート以外の地方に誘致するのは容易ではなく、まずは2度目以降の訪日者を重点対象とした誘致戦略を練るべきだと考えられる。今こそ、日本の魅力を地方が主体となって海外へ発信していく必要がある。
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