金融資産・負債の中期見通し(2021~2030年度)~「日本経済の中期見通し」の貯蓄投資バランスに基づく金融ストック版の見通し~
2022/01/11 調査部、GRCコンサルティング部
日本経済中期見通し
国内マクロ経済
- 本稿は「日本経済の中期見通し」の金融ストック版であり、預貯金残高、貸出残高を中心とする金融資産・負債の残高の見通しを報告するものである。金融資産・負債は、期初ストックに期中での増減が反映され、期末ストックが決定される。そこで、期中増減は個人・企業・政府の貯蓄投資バランスに応じるという関係を応用し、調査部作成の「日本経済の中期見通し」における貯蓄投資バランスの予測を用いて、金融ストックの予測を作成した。
- 日本では高齢化・人口減少を背景に個人預貯金残高が減少すると指摘されて久しいが、実際にはなかなか減少しないばかりか、新型コロナウイルス感染症への対策として特別定額給付が行われたこともあり、個人預貯金残高は全体としてむしろ足元で大きく増加した。将来予測期間においても2028年度までは個人貯金残高は増加が続く見込みである。
- 企業部門では、経常利益が堅調に推移する一方で、同程度の設備投資の伸びは見通せないことから、手元流動性は潤沢となり、企業預金は堅調な増加を見込む。これに地公体預金を加えた法人預金は2030年度まで伸びが続くと予測する。
- 金融機関の貸出金は、コロナ禍において民間金融機関の実質無利子・無担保融資などが伸びたことで、足元で急増したが、将来予測期間においては概ね横ばいから微増で推移するであろう。貸出の伸びは預貯金残高の増加率には及ばないため、預金取扱金融機関の預貸ギャップは緩やかな拡大が続く見通しである。
- 金融機関が経営計画を描く上で、預貯金残高・貸出残高の全体パイの見通しが存在することは有益であろう。全国展開する金融機関の場合には全国での預貸見通しが役立つ一方で、地域金融機関の場合、自らの主要営業エリアの地域別預貸見通しが必要である。
- 地域別の預貸計数の公表統計は乏しいが、複数統計の組み合わせによる過去実績値の推定および将来見通しを按分したところ、地域による個別性が大きいとともに、残高成長が続くエリアと、そうではないエリアとの格差が大きいとの結果が得られた。このため、金融機関としては各エリアの預貸需要の変化に応じて、国内の営業店舗配置などにおいて選択と集中を一層推し進める必要性があると思われる。
※(11月25日訂正)レポート内に誤記がありました。訂正してお詫び申し上げます。
訂正箇所: p.11-12掲載「金融ストック見通し総括表」内、「金融見通し」-「預金金融機関」の全データ
訂正箇所詳細は正誤表をご確認ください。
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