日本経済の中期見通し(2023~2035年度)~コロナ禍からの脱却後、再び人手不足に直面する中で生産性向上への挑戦が続く~
2023/09/29 調査部
日本経済中期見通し
GDP
国内マクロ経済
- 足元の景気は、コロナ禍からの脱却が進み経済社会活動が正常化する中で、緩やかに回復している。ただし、コロナ禍からの回復による押し上げ効果は2023年度中に一巡すると考えられ、その後の回復ペースは鈍化すると見込まれる。それでもタイトな労働需給を背景として名目賃金の増加が続く一方で、原油など資源価格のピークアウトを受けて物価上昇圧力が鎮静化してくること、需要回復を背景に企業利益の拡大が続くことから、成長と配分の循環の動きがある程度進むと期待され、2024年度から2025年度にかけても緩やかな景気回復基調が維持されよう。また、企業の設備投資に対する前向きな姿勢、海外経済の回復といった点もプラス要因となる。
- 2020年代前半の5年間は平均で+1.6%と高い伸びとなる。これはコロナ禍の反動もあって2021~2022年度に高い伸びを記録した後、2023~2025年度の3年間の平均成長率も年率+1.3%と底堅い伸びが続くためである。コロナショック後の経済正常化の過程における回復の勢いが一服し、人口減少、高齢化進展の影響が強まってくるなどのマイナス要因は多いが、労働生産性向上や働き方改革の定着化によって供給能力の拡大は維持され、経済成長はプラス基調を維持する見込みである。
- これに対し、2026年度以降の実質GDP成長率は、何回かの景気の拡張と後退のサイクルを経る中で、均してみると、2026~2030年度に平均+0.9%、2031~2035年度に同+0.8%と次第にテンポが鈍る見込みである。もっとも、人口減少ペースが加速し、労働投入量の減少幅が拡大するといったマイナス効果が増大する割には、成長率の落ち込みは小幅にとどまる。
- これは、通信環境などのインフラの整備、生成AIなど新技術の普及、業務のリモート化、情報リテラシーの向上、またそれらを使っての技術革新と各種ビジネスの誕生が生産性の向上に寄与するほか、供給制約の問題への危機感をばねとした企業の様々な取り組みにおいて次第に成果が現れ始めることで生産性が高まり、人手不足による供給制約を緩和することが可能になると見込むためである。また、インバウンド需要の増加が続くことや、限られた供給力の下でより付加価値の高い製品やサービスへの移行が進むことも、成長率の押し上げに寄与すると考えられる。さらに、業務のオンライン化が進む中で、都市や地域の機能、サービスにおいて地域間格差が是正され、高度化されることも生産性を向上させる。
- 1人当たり実質GDP成長率の動きをみると、2016~2020年度の平均-0.3%に対し、2021~2025年度にコロナ禍の反動の影響もあって同+2.1%と高い伸びとなった後も、生産性の向上を維持できることを前提に2026~2030年度、2031~2035年度とも同+1.4%の伸びを確保できると見込んでいる。
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