2022/2023年度短期経済見通し(2022年9月)(2次QE反映後)~景気下振れリスクが高まる中にあっても、緩やかな回復基調は維持される~
2022/09/12 調査部
日本経済短期見通し
GDP
国内マクロ経済
- 9月8日発表の2022年4~6月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比+0.9%(年率換算+3.5%)と設備投資を中心に1次速報の同+0.5%(年率換算+2.2%)から上方修正された。上方修正幅はやや大きめであったが、感染拡大の一服を受けて経済社会活動が活性化したことを改めて確認するものであり、景気に対する判断を変えるものではない。行動制限のない大型連休を迎えて対面型サービスを中心に個人消費が増加し、全体を押し上げた。
- 7~9月期もプラス成長は維持されよう。物価高や感染拡大の影響が懸念される一方で、①夏休み・秋の行楽シーズンに行動制限が課されないこと、②これまでのコロナ禍で積み上がった貯蓄を源泉に、対面型サービスを中心にリベンジ消費が維持されること、③自動車の生産制約が解消に向かうこと、などから個人消費の増加傾向は維持される。また、企業のマインドの高さを背景に設備投資の増加が続くこともプラス要因である。
- 2022年度後半も、感染拡大防止と経済社会活動の活性化のバランスを慎重に図ることが求められようが、それでも感染防止のために行動制限が課されることはないため、個人消費を中心に景気は回復基調を維持する見込みである。昨年度の補正予算、物価高対策、外国人観光客の受け入れ拡大などの政策効果も景気を下支えするであろう。また、感染状況次第では、全国を対象とした観光需要喚起策の実施も可能となり、需要押し上げに寄与しよう。
- 2022年度の実質GDP成長率は前年比+2.0%(ゲタの効果を除いた成長率では同+1.6%)を予想する。2022年度は、徐々にコロナショック前の生活様式に戻っていく、アフターコロナ期への移行期間に位置付けられ、平時への復帰が景気を押し上げる原動力となる。また、年度内に米欧並みにコロナ規制の緩和が実施される可能性がある。
- ただし、①資源価格上昇や日米金利差拡大を受けた円安によって物価上昇圧力が高まっており、消費者マインド悪化、実質購買力低下を通じて、感染収束後の消費回復を抑制する、②新型コロナウイルスの感染拡大を受けて家計が自主的に行動を制限する、③世界的な物価上昇を背景に、米国をはじめとした各国で金融引き締め政策が進められており、金利上昇が世界経済の回復ペースを鈍らせる、などの景気下振れリスクが顕在化すれば、回復テンポが鈍化する可能性がある。また、労働需給がタイト化しつつあり、人手不足を背景に供給制約が発生する懸念もある。
- 2023年度は、コロナの感染拡大による経済社会活動の制限はほぼ解消される見込みであり、景気の回復が続く。実質GDP成長率は前年比+1.8%(ゲタを除くと同+1.0%)を予想する。人手不足や地政学リスクといった景気の下振れリスクが高まる懸念はあるが、コロナ禍で得た教訓の成果が効力を発揮し、労働生産性向上や潜在成長力の底上げを促すと期待され、四半期の実質GDPも年度内に過去最高を更新する。2024年度も同+1.2%(ゲタを除くと同+0.7%)と回復基調は維持されるが、コロナ禍からの回復による押し上げ効果が一巡するためテンポは鈍化しよう。
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