2023/2024年度短期経済見通し(2023年6月)~下振れ懸念が残る中、経済社会活動の正常化を反映して景気は緩やかな回復基調を維持~
2023/06/09 調査部
日本経済短期見通し
GDP
国内マクロ経済
- 6月8日発表の2023年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比+0.7%(年率換算+2.7%)と1次速報の同+0.4%(同+1.6%)から上方修正されたが、民間在庫投資の修正によるところが大きく、「景気は緩やかに持ち直している」との判断を修正するほどの内容ではなかった。
- 1~3月期のプラス成長の原動力となったのが個人消費で、物価高のマイナスの影響を受けつつも、コロナの感染収束を受けて宿泊・飲食サービス、レジャー、旅客輸送などへの支出が増加したことに加え、生産制約の解消が進んだことで自動車販売が増加した。また、企業の設備投資意欲は底堅く、設備投資も前期比プラスに転じた。一方、サービス輸出にカウントされるインバウンド需要は堅調に増加したが、財輸出が低迷し、外需寄与度はマイナスに転じた。
- 1~3月期の前向きな動きは新年度にも引き継がれており、対面型サービスを中心に個人消費の増加が続くうえ、円安効果もあってインバウンド需要がさらに増加すると期待されるなど、コロナ禍の終息に向けた動きが加速することで、4~6月期も景気の緩やかな持ち直しが続く。自動車の生産制約の解消進展、春闘の賃上げ率アップを反映した賃金の伸び率拡大、夏のボーナス支給額の増加も景気にとってプラス要因となろうが、前期の反動で在庫寄与度のマイナス幅が拡大し、全体を押し下げる可能性には注意が必要である。
- 引き続き景気の下振れ要因は多い。物価高対策が今年度末まで延長されると想定しているが、それでも抑制に限界がある。このため、家計の節約志向が強まることや、実質賃金の低迷が長期化することによって個人消費の回復が遅れる可能性がある。加えて、海外経済減速や世界的なIT関連財の需要低迷長期化で輸出が減少する、人手不足を背景に供給制約が発生するといったマイナス材料が加わることで、景気回復テンポが大幅に鈍るリスクがある。
- それでも、緩やかな景気回復の動きは維持されよう。2023年度の実質GDP成長率は前年比+0.9%を予想する。物価上昇や海外経済減速による下振れ懸念が残るものの、コロナの感染状況に景気が左右されないアフターコロナ期に移行する中で、内需を中心に緩やかな景気回復が続き、景気の腰折れは回避される見込みである。リベンジ消費の盛り上がりも夏頃には一巡する見込みであり、いったん景気回復の足取りが弱まる局面も予想されるが、雇用・賃金の増加を背景に個人消費の増加基調が維持されることや、アフターコロナ期を見据えた企業の前向きな設備投資の増加が、景気を押し上げる原動力となる。年度末にかけて、海外経済が回復基調に転じ、物価上昇圧力が落ち着いてくれば、次第に景気回復の足取りもしっかりとしたものになってくるであろう。
- 2024年度も前年比+1.3%とプラス成長を見込む。コロナ禍からの回復による押し上げ効果が一巡する一方で、物価上昇率の鈍化、海外経済の回復といったプラス要因により、緩やかな景気回復基調が維持されよう。
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