2023/2024年度短期経済見通し(2023年12月)(2次QE反映後)~景気回復は続くが、コロナ禍明け後の需要回復が一巡する中で、ペースは緩やかにとどまる~
2023/12/12 調査部
日本経済短期見通し
GDP
国内マクロ経済
- 12月8日発表の2023年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比-0.7%(年率換算-2.9%)と、個人消費や在庫投資を中心に1次速報の同-0.5%(同-2.1%)から下方修正された。景気が緩やかに回復する中でのスピード調整の動きであり、景気腰折れを示唆するものではないが、内需の柱である個人消費、設備投資ともに2四半期連続でマイナスとなるなど内容も弱く、回復力は力強さに欠けることが改めて示された。マイナス成長に陥った原因として、物価高によるマイナスの効果が大きかったことが挙げられる。
- 景気回復の動きは維持されており、10~12月期以降は再びプラス成長に復帰する可能性が高い。米国を中心に海外経済の下振れリスクが薄らいでいることに加え、雇用情勢の改善・名目賃金の増加は続いており、企業の設備投資意欲も強い。また、自動車の生産制約解消で個人消費や輸出の増加が期待されるうえ、インバウンド需要が増加に転じることも、景気にとって追い風となろう。しかし、依然として物価上昇圧力は高く、消費者マインドの冷え込みが懸念されるほか、幅広い業種で人手不足が深刻化しつつあり、供給制約の問題も不安材料である。
- さらに、これまで景気を押し上げてきたコロナ禍明け後の需要回復は、ほぼ一巡したと考えられる。このため、2023年度後半の景気回復は緩やかなペースとなり、2023年度の実質GDP成長率は前年比+1.5%となろう。2022年度の同+1.5%と同じ伸びではあるが、成長のゲタの影響を除けば+0.5%と小幅であり、見た目ほど強くはない。
- 2024年度も景気の緩やかな回復が続き、実質GDP成長率は前年比+1.0%と4年連続でプラス成長を達成すると見込む。もっとも、景気の下振れ要因は多く、回復ペースの鈍化が心配される。中でも物価高のマイナスの影響が当面の最大の懸念材料である。政府の物価高対策は2024年4月に打ち切りとなることを前提としており、対策効果剥落後は、人件費や物流コストの増加と相まって物価上昇圧力の強い状態が続くと予想される。このため、家計の節約志向が強まることで個人消費の伸びが抑制される可能性がある。加えて、海外経済減速や人手不足を背景とした供給制約といったマイナス材料が加わることで、景気回復テンポが一段と鈍るリスクがある。
- 2024年度に景気回復が継続できるかは、物価動向とともに、春闘での賃上げ率にも大きく左右される。企業利益の増加、労働需給のひっ迫、物価高と、賃金上昇を促す条件が整いつつあるが、多くの不透明要因がある中で、前年実績を大幅に上回る賃上げの達成は難しいだろう。また、春闘の賃上げ率が全ての企業に波及するとは限らない。
- 2025年度は同+1.5%とプラス成長が続くと見込む。同様に賃上げが継続されるのかがポイントとなるが、コストプッシュによる物価上昇圧力が一巡する中で物価上昇率も鈍化すると予想され、海外経済が失速することがなければ、内需を中心に景気回復が続くであろう。
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