2023/2024年度短期経済見通し(2024年3月)(2次QE反映後)~景気は一時的な足踏み状態にあるが、再び回復基調に転じる~

2024/03/12 調査部
日本経済短期見通し
GDP
国内マクロ経済

3月11日発表の2023年10~12月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比+0.1%(年率換算+0.4%)と、1次速報値の同-0.1%(同-0.4%)から上方修正された。ただし、プラス幅が小幅であるうえ、内容の厳しさに変わりはなく、引き続き景気は足踏み状態にあると判断される。プラス成長に復帰したのは1次速報時点で未公表だった10~12月期の法人企業統計調査の好調な結果が反映され、実質設備投資が大きく上方修正されたためである。好調な業績を背景に企業の投資意欲の強さが維持されている中、これまで弱い動きが続いていたが一気に挽回する形となった。一方、個人消費は、物価高による節約志向の高まり、コロナ禍明け後の対面型サービスの需要一巡、暖冬の影響による季節性商品の販売低迷などにより減少に歯止めがかかっていない。

2024年1~3月期はマイナス成長となる見込みで、景気はすでに軽い調整局面入りしている可能性がある。能登半島地震のマイナスの影響は軽微だが、①一部自動車メーカーの生産停止により、個人消費、輸出にマイナスの影響が出る、②10~12月期に全体を押し上げたサービス輸出急増の効果が剥落する、③コロナ禍明け後の対面型サービスの需要増加はすでに一巡している、などが主な理由である。2023年度の実質GDP成長率は前年比+1.2%となるが、年度前半の伸びが高かったためで、成長のゲタの影響を除けば+0.3%と小幅である。

2024年度入り後、景気は再び緩やかな回復軌道に復帰する見込みである。第一に、雇用情勢の改善・人手不足の深刻化を背景に、2024年の春闘でも高い賃上げ率が期待され、物価上昇圧力の低下とも相まって実質賃金の改善が進み、個人消費の腰折れは回避できよう。第二に、業績改善を背景に企業の投資意欲の強さも維持され、設備投資は底堅さを維持しよう。こうした内需回復に加え、米国を中心に海外経済の下振れリスクが薄らいでいる、自動車の生産回復で輸出増加が期待される、インバウンド需要の増加が続く、世界的にIT関連需要が回復しているなども、景気にとって追い風となる。2024年度の実質GDP成長率は前年比+0.7%と4年連続でプラス成長となると見込む。伸び率は縮小するが、成長のゲタの影響を除けば+1.4%と底堅い伸びである。

もっとも、景気の下振れ要因は多く、回復の遅れが心配される。中でも物価高の影響が当面の最大の懸念材料である。政府の物価高対策は2024年4月での打ち切りを前提としており、対策効果剥落後は、人件費や物流コストの増加を背景に物価上昇圧力の強い状態が続くと予想される。このため、家計の節約志向が強まることで個人消費の低迷が続くリスクがある。加えて、海外経済減速や人手不足による供給制約といったマイナス材料が加わることで、景気の低迷が長期化するリスクがある。

2025年度は前年比+1.7%とプラス成長が続こう。引き続き賃上げの大きさがポイントとなるが、コストプッシュによる上昇圧力が一巡する中で物価上昇率も鈍化すると予想され、内需を中心に景気回復が続くであろう。

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