2024/2025年度短期経済見通し(2024年6月)(2次QE反映後)~景気は足踏み状態を脱し、回復基調に転じる~
6月10日発表の2024年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報)は、1次速報と同じ前期比-0.5%(年率換算では-2.0%から-1.8%に上方修正)となった。2四半期ぶりのマイナス成長であり、内需が4四半期連続でマイナスとなるなど内容も弱く、昨年度中は景気が足踏み状態にあったことを改めて示す結果である。中でも個人消費は、品質不正問題による自動車の生産停止の影響などにより耐久財が急減したほか、物価高の影響による節約志向の高まりによって非耐久財や半耐久財の低迷が続き、前期比-0.7%(1次速報から修正なし)と4四半期連続で落ち込んだ。設備投資は1次速報時点で未公表だった1~3月期の法人企業統計調査の結果が反映され小幅に上方修正されたが、前期比はマイナスのままである(同-0.8%から-0.4%に上方修正)。
2024年4~6月期は、自動車生産の回復、サービス輸出の落ち込みの反動などによりプラス成長に復帰し、その後も、景気の緩やかな回復基調が続くであろう。第一に、2024年春闘の5%を超える高い賃上げ率が反映されることで、物価上昇圧力の低下とも相まって実質賃金の改善が進み、個人消費の回復が期待される。6月より導入される1人4万円の定額減税や、夏のボーナス支給額の増加も、個人消費の押し上げに貢献しよう。第二に、業績改善を背景に企業の投資意欲の強さも維持され、設備投資は底堅さを維持しよう。こうした内需の回復に加え、米国を中心に海外経済の下振れリスクが薄らいでいる、インバウンド需要の増加が続く、世界的にIT関連需要が回復しているなども景気にとって追い風となる。
2024年度の実質GDP成長率は前年比+0.6%と4年連続でのプラス成長を見込む。伸び率は縮小するが、マイナスの成長率のゲタによって見かけ上の伸び率が低いためで、それを除けば+1.2%と底堅い伸びである。
もっとも、景気の下振れ要因も多い。中でも物価高の影響が当面の最大の懸念材料である。政府の物価高対策はすでに一部が打ち切られており、今後は人件費や物流コストの増加も加わって物価上昇圧力がかかりやすい状態が続く。加えて、足元の1ドル=150円を超える円安が定着化すれば一段と上昇圧力が強まる。そうなった場合、家計の節約志向が強まることで個人消費の低迷が続くリスクがある。さらに、海外経済減速、人手不足による供給制約、自動車の追加不正問題の影響拡大といったマイナス材料が加われば、景気の低迷が長期化する。
2025年度は前年比+1.3%とプラス成長が続こう。引き続き賃上げの大きさが景気の先行きを左右するポイントとなるが、人手不足の状態と企業業績の改善が続く中で、賃金が上昇しやすい環境が維持されるうえ、輸入物価の上昇圧力が一巡する中で国内の物価上昇率も鈍化すると予想され、内需を中心に景気回復が続くであろう。
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